一見、凪のように見える海が、実は深海では大きな潮のうねりが起こっているというようなことがある。緩やかで大きいデフレという波に数年来翻弄されること以外には、さほど変化がないようにみえる酒類業界も、その底流では大きな奔流が発生している。
国内酒類市場の頭打ちを前提に、キリンホールディングスとアサヒビールはそれぞれ収益を海外に求める姿勢を鮮明にしている。国内でキリンホールディングスは、今秋にも、栃木工場と北陸工場を閉鎖する。また事業の「本丸」であるキリンビール社の営業部隊と、量販店や飲食店の店頭で陳列活動を行うグループ会社を統合する。アサヒビールも来年からホールディング制を導入するとともに、事業構造改革を加速している。実に「スピーディ」なのが特徴だ。
一方で、これらの変化は「低価格競争に走ってきた国内酒類産業の帰結ではないか」との厳しい指摘もある。輸入品を含む新ジャンル、紙パック清酒、ペットボトル焼酎、低アルコール飲料…数年来、酒類業界は低価格競争に明け暮れてきたとも言えるからだ。
もちろん、アルコールを感じさせない工夫で若者の人気を獲得したハイボール、お酒を口にしない若者の潜在的ニーズを捉えた低アルコール飲料、氷点下でのビールの愉しみ方などは、新しい可能性を示した。価格軸とは一線を画す提案こそが明るい未来を拓くだろう。(9/6)


