食肉スライサー業界にしても、1年前は米国発金融危機の影響で底が見えない状態だった。「最悪を想定していた」が、4~10月の売上げの進捗は前年比数%減にとどまっている。営業活動の改善と新製品の投入したことが大きく寄与したためだ。従来は直販の部隊任せであった営業スタイルを、本社の営業・開発と連携を取りながら、ユーザーと取り組みを図ることで大きな成果につながった。
なんつねの南常之副社長は「移動など効率面では良くないが、本社の営業・開発者がユーザーの生の声、真のニーズを肌で感じられることが非常に大きい」と語る。3年前から準備を進めてきたが、「社員が手応えを感じ出した」ことで、さらに一つ上の段階へ動き始めた。
一方新商品「リブラ」は誰でもきれいに定量パック詰めができるというスライサーで、デモンストレーションの依頼が殺到し、3ヵ月待ちという状況だ。販売実績はこれからという段階だが、新商品をテコに大きな拡がりを見せる。
「提案と顧客のニーズを訊く中で、別の提案や受注があったり、またヒット商品にしたいという社員の意識が一致し、価値観を共有できることが大事。多くの既存品のモデルチェンジも重要だが、これは新商品ならではの成果である」ともいう。
リブラの開発には新入社員らの意見を多く取り入れたことも、今後の期待を抱かせる。さらには従業員の年齢層のバランスもいい。構成比では20~30代が半数以上を占め、その一方で70歳以上の長老たちも現役で、知識の伝達・若手指導にも力を注いでいる。
今年最終年を迎える中期経営計画は、顧客ニーズの引き出しと幅広いソリューションの提供という点では、一定の成果を上げ、真の狙いの開発力という面でも強化を図ることができた。また売上げも、前年並みを見込む。
この3ヵ年では外部環境の変化も著しいが、ニーズの多様化に伴い、他社機の扱いが増えたことも利益率を押し下げる要因になっている。それでも売上げは着実に増加を続け、高騰の原材料は先手を打つことでヘッジ、競合激化にも負けていない。
来年が初年度の新中期経営計画では、この3年間で培った開発力を活かし、「新商品をどんどんアウトプットする」計画だ。そのために「ユーザーのニーズをしっかり見極め」、次の3ヵ年で実をつける狙いである。
南副社長は入社して7年目。経営に本格参画して5年になる。財務指標面などでは一定の成果を上げつつも、「売上げなど財務指標を重視しすぎたという反省点も残る」という。「競争力の原点」と位置づける教育面では徹底強化してきたが、「やり方でまずい面もあった」とこの点では相当な意気込み。週末には神戸大学大学院博士課程にて、企業分析の研究のために足を運ぶなど、自らにも投資は惜しまない。
なんつねは今年80周年を迎え、自らが先頭で100周年を担うことになるが、「人口減少で食品市場がシュリンクする中で、食品加工機械も、より付加価値の高い商品開発を行うとともに、水平展開により海外で生き残りをかける」。海外で現在10%程度の販売実績があるが、薄切り肉という食文化の各国へ拡大を図っていく計画だ。(11/26)
南常之(みなみ・つねゆき)
1975年生まれ、大阪府出身。98年関西大学文学部教育心理学科卒業、同年南常鉄工(現なんつね)入社。02年カリフォルニア州立大学経営大学院卒業経営学修士(MBA)取得。02年取締役、05年4月より現職。


