ホーム > この人の出番 > 第121回 イシイ 代表取締役社長 竹内正博氏

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この人の出番

「動物福祉」で真に健康的な畜産 イシイ 代表取締役社長 竹内正博氏

「動物福祉」(Animal Welfare=AW)と言っても、ピンとくる人は少ないかも知れないが、畜産の世界においては、喫緊の課題となりつつある。簡単に言えば、家畜に関して、飼育方法や飼育密度、健康管理などの基準を定め、家畜を大切に健康に飼育しようという考え方である。

既に、EUや米国ではガイドラインの制定が進んでおり、日本でも畜種ごとに進められている。結論から言うと、2012年には国際的な基準が決まる見通しであると言われている。

竹内氏によると、「動物福祉という概念は以前からあったが、これが形になり始めた契機は、牛のBSE。そして、鳥インフルエンザ、最近の新型インフルエンザによって、方向性は決定的となった」と言う。つまり、家畜の健康は、それを食する人間にとっても、決定的に重要な要件となってきたのである。

例えば、日本の鶏肉業界では、約20年前に食鳥検査制度という、加工場の衛生を担保するための制度が制定されたが、その前の段階、即ち、生きている鶏の農場での飼育に関しても規則を定めなければ、真に健康的な鶏肉製品はできないという、従来からある基本概念に立ち還ることになる。

世界を股に掛け、国際会議や農場視察に度々出掛けている竹内氏は、これまでも、いち早く有機畜産などに取り組んできたが、「有機畜産の原則は、環境保全と動物福祉なので、概念的には延長線上にあるが、有機畜産のうねりよりも、動物福祉のうねりは圧倒的に大きいものだ」と強調する。それは、ほとんどの家畜に関わってくるコンセプトだからである。

竹内氏の情報によると、「既に英国では、動物福祉に配慮した食肉を生産することで急成長したフリーダムフーズ社の鶏肉のシェアが、この10年で7%に拡大しており、その他企業を含めると、動物福祉鶏肉は鶏肉全体の15%に達している。一方で、オーガニック鶏肉は1%に過ぎない」と言う。

もちろん、生産者にとってはコストアップ要因となるが、家畜を一定の基準で飼育しているという保証は、消費者にとっても、今まで以上の安全・安心につながるので、明確な価値付けがなされるようになるだろう。竹内氏は、「そういう時代がすぐそこまで来ていると想定され、官民挙げての変革となるので、ビジネス的にも成立する」と見ている。

竹内氏は、動物福祉の普及啓発活動にも積極的に取り組んでおり、一昨年、東北大学に寄付講座を設けた。動物福祉を理解する研究者を増やすことが業界の発展に寄与すると確信しているためである。今後、より多くの企業がこの活動に参加するよう呼び掛けている。

近年、動物虐待のニュースがよく報じられるようになったが、この現象にしても、ニュースバリューが高まっているから成立すると考えれば、「動物福祉」という新しい概念の下地も整備されつつあると言える。動物福祉重視への転換は既に始まっている。(5/13)

竹内正博(たけうち・まさひろ)
1951年徳島県生まれ。日本大学農獣医学部拓殖学科卒、ミズーリ大学大学院会計学修士課程修了。84年に石井養鶏農業協同組合の子会社であるアイピーに入社。91年にイシイ(ブロイラー雛生産会社)2代目社長、アイピー通商(創業した貿易会社)初代社長。01年に石井養鶏農業協同組合2代目組合長に就任。