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この人の出番

「食の安全・安心」ライフワークに 製粉会館 代表取締役社長 新倉英隆氏

慶応の片岡一郎ゼミで欧米のマーケティングマネジメント理論を学んだ新進気鋭の青年が、日清製粉に入社したのは1963年。日本が高度経済成長を迎え、欧米の食文化を受け入れ始めた時代だ。

「原料供給メーカーのマーケティング理論」の一貫したライフワークのもと、冷凍麺、乾麺、ピザ、クリスマスケーキなどの市場のマーケティング調査と需要創造を最深部で推進してきた。経済成長期以降の日本と世界の食文化の融合を実現してきた立役者といえる。

「小麦粉という商品差別性の少ない商品の非価格競争の推進」を常に考えてきた。1981年に日本冷凍めん協会を設立したのはその一例だ。うどんでテスト外食店を出すなど、マーケティングのソフト面から、専用小麦粉や生産技術の開発といったハード面の両面に渡って理論と実績を打ち立てた。今や冷凍麺は市場規模1,500億円に成長した。

また、新しい食文化の創造という面では、一例として、フランスパン普及の仕掛けを行ったのも同氏だ。当初はフランスから講師を招聘して講習会を5年間続けるなど地道な取組みから始めた。いまやフランスパンは町のパン屋さんのメインアイテムとなっている。

小麦粉の需要開発を次々に行うなかで避けられないと痛感してきたのが「食の安全・安心の追求」だ。現在でこそ、コンプライアンスやISOの取得など、CSRの取組みが当然のことになっているが、それを何十年も前から考えてきた。これが氏の第2のライフワークとなる。

現在、副理事長を務める社団法人日本パン技術研究所に、2001年の段階でフードセーフティ部を設置、AIB(米国製パン研究所)とライセンス契約を結び、「AIB食品安全統合基準」に基づく食品安全衛生指導・監査事業を開始した。2009年度に行った指導・監査実施事業所は、製粉や油脂といったパンに関わるところはもちろん、精米、乳製品、菓子、調味料、食肉加工、香料、リテールなど食品産業界全般、その数は355事業所にわたる。

一方、冷凍めん協会でも、生活者目線に立った品質保証体制構築の重要性を啓発している。RMK認定マークはその一端を示す。全認定工場に対して、年1回以上の「製品一斉検査」の実施や、食品衛生技術指導者の訪問と指導の義務付けなどハードルを設け、食品事故の未然防止につとめている。

頻発する食品企業の不祥事は、第一義には経営者に責任があるとはいえ、一方で食品企業の構造的な問題が根本にあるとの指摘もある。ISOやHACCPなどのシステム構築と不断のPDCAの取組みが求められるゆえんだ。いち早くその重要性を認識してきた氏は、これからも食品業界を襲うであろう様々な荒波の場面で、その解決策を教示してくれるだろう。(5/27)

新倉英隆(にいくら・ひでたか)
1963年慶応義塾大学商学部卒、同年日清製粉入社。93年取締役製粉第一営業部長、99年代表取締役専務。2001年日清製粉グループ本社代表取締役専務、日清製粉取締役社長。04年オリエンタル酵母工業代表取締役会長。08年製粉会館代表取締役社長。なお、03年にはパン技術研究所副理事長、04年には日本冷凍めん協会相談役理事に就く。趣味の登山は、百名山踏破にあと1つを残す。