低価格化競争が続くチルド麺市場で利益を重視した事業展開を行っているシマダヤ。穀物価格が高騰するなかで量よりも質を重視した取り組みに注目が集まる。同社の木下紀夫社長に今後の取り組みと、価格対応への考え方を聞いた。
――現況について。
木下 9月の時点でトータル100%。うち業務用は104%、チルドは99.7%となっており、夏物商品の調子が良い。今期は100%で着地して、利益率は計画を上回る見通しだ。今期は安売りを抑えてシェアではなくマーケットの拡大を意識して取り組んできた。その結果として売上は前年並み、利益は2ケタの増益となる見込みだ。
――麦価改定の影響は。
木下 10月には10%増と大きく値上がりする。影響は大きく、製品価格の改定を検討中(10月15日に価格改定を発表。来年からチルド麺で3~17%の値上げ)だ。吸収できない分を価格に転嫁するのは当たり前のことで、意地を張っても会社が持たない。小麦だけでなく、最近では原油も高騰しており、茹で麺ではボイラーに使う重油の価格が数年で大幅に値上げした。また、最近では安全・安心に対する設備投資も増えてきている。粉価の改定だけでなく複合的な要因から値上げは不可避だ。
――今後も麦価改定は続きますが影響は。
木下 年に3回も値上がりした場合に価格の改定ができるのか、それが一番の問題だ。現在のシステムの中で麦価が変われば、それに伴う価格改定をお客様にお願いするのはメーカーの責任。だが、改定が発表されてから3カ月程度で全てのお客様に価格改定を説明するのは難しい作業だ。せめて半年は時間的余裕が欲しい。
――秋冬商品の価格設定は。
木下 一部の商品で改定した。小麦の値上げに伴う価格改定だと思われているが、製品のリニューアルに伴う価格改定であり、従来通りの対応。リニューアルによって、より高い価値を提供しているのだから、新しい価格を設定するのは当然だと考えている。価値に伴う新しい価格の設定は、小売業も望んでいるはず。価格競争だけの商品ではなく、売り場になくてはならない商品を開発する努力がメーカーには必要だ。生麺業界はコモディティ商品に走りすぎている傾向があり、脱却が必要だ。
――今後の戦略は。
木下 シェア拡大のためのやたらな競争で体力を消耗するのは業界にとってよくない。利益を削っても、それに見合うだけの売上が望めないのならば、価格訴求をしても意味がない。商品開発によって新しい価値を見出していくことが大切だ。例えば当社が春に発売したパスタ(「生パスタ厨房 代官山」)は確実に伸びている。売上を狙うのではなく、着実に価値を訴求していくことで商品を伸ばす。
――業界の展望を。
木下 生麺メーカーは地場産業である、と考えている。地域性を出せるなど、良いところがたくさんある。だから絶対に消してはいけない産業だ。しかし、価格に振り回されていたら業界そのものを衰退させることになる。今年は小麦の価格改定に対応していくなど大変な時期を迎えることになるが、価値を提案することで適正な価格を得ていくことが大切だ。(11/08)
木下紀夫(きのした・のりお)1954年生まれ。78年獨協大学卒、島田屋本店(現シマダヤ)入社。98年チルド事業部長兼広域営業部長、98年6月取締役、02年常務取締役、06年代表取締役社長。趣味はサッカー観戦。


