食品業界が今ほど消費者から厳しい目で見られている時はない。こうした状況でキッコーマン本社の品質管理責任者となった。日米欧の3地域で品質管理や製造部門を担当してきた「国際派」としての経験が生かされるだろう。
就任してすぐ日本と欧米とは食品企業を取り巻く環境が大きく異なっていることを強く認識した。「インターネットなどで日本の食品業界で不祥事が多発していることは知っていたが、現在もその状況に変わりはない。今は本当に食品企業の姿勢が厳しく問われている。と同時に食品企業における品質管理、品質保証の重要性が再認識されているのではないか」。そして「責任の重さに身の引き締まる思い」と述べる。
品質管理部の役割については「当社は品質第一を掲げている以上、自信を持ってお客様に安全で安心できる商品を製造し、適正な価格で販売する。そのような会社の使命を達成するためのチェック機構が品質管理部の役割である」という。
そのための具体的活動は何か。「品質管理の重要性は分かっているが、品質管理担当者ががんばればできるというものではない。最新の分析技術を導入するなど最終製品をチェックして不良品をなくすことは我々の仕事の一つだ。しかし製造現場がいかに品質を重要視して製造するかが重要であり、そのために製造部門と品質管理部門との協力が必要だ。製造の各部署との話し合いでは製造現場の状況に品質管理部としての意見を言う。コストも考える製造部門からの反論も時にはあるが、顧客本位、品質重視という会社の基本姿勢は製造部門も理解している」。
ある意味では製造現場からは煙たい存在でもあるが「マンネリ化の防止、慣れと甘えを許さない姿勢が必要だ。よくあることさ、なんとかなるさ、といった安易な気持ちが事故につながり、会社の信用失墜とブランド価値のダメージをもたらす」と強調する。
また技術者として品質管理を見た場合、最近の低塩商品の需要増への対応に留意が必要と説く。『元々当社は醤油が主力ですが、しょうゆは塩分が高く非常に腐りにくい。しかし今は本つゆや減塩醤油など低食塩の商品を多く出しているので、そのような商品への製造・管理には細心の注意が必要だ」と語る。
アメリカ、ヨーロッパであわせて13年間の海外勤務がある。「ちょうど伸びている時で仕事は忙しくて大変だったが、やりがいがあった」と振り返る。
最も印象的なことは食文化の重要性だ。ヨーロッパは日本食ブームに沸く。「彼らは自動車、家電など日本製品を高く評価しているが、これらの製品だけでは日本人の顔が見えづらい。一方醤油や日本の他の食品を通じて、日本人のライフスタイルや考え方などが見えてくるという。食文化を通して当社の考え方や感性を伝えることで、もっと日本に関心を持ってくれるし、一緒に食べればお互いに絆を強めることにつながる」。と語った。(12/20)
神戸千幸(かんべ・ちゆき)
1950年生まれ。73年キッコーマン入社。中央研究所研究員等を経て90年から7年半ウィスコンシン州の工場で品質担当マネージャー、その後高砂工場の品質管理グループ長、02年から再び海外勤務でオランダにあるキッコーマン・フーズ・ヨーロッパ社社長と長く国際畑を歩んできた。農学博士。11月1日から現職。趣味はゴルフ、テニス、旅行、読書。オランダでは地元の人とよくゴルフコースに出た。「100を切れば幸せ」とは謙遜?


