ホーム > この人の出番 > 第23回 三菱総合研究所 野口和彦氏

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この人の出番

危機管理構築へ議論を喚起 三菱総合研究所 研究理事 野口和彦氏

「我々は消費者と企業人の両方の立場を備えている。成熟した大人の社会にあっては、複数の見方で物事を判断しなければならない」


企業不祥事の原因を追究していくと、最後に人間の心に行き着く。そこには「企業人としての自分」を前面に出す姿が浮かび上がる。

 

「日本の場合、『大人』といえば、組織でうまく立ち回ることと、思われている。農村社会時代にあっては、それで良かったかもしれない。だが、科学技術が進歩した現代社会で、そうした理屈が通用するのだろうか」。


危機管理を構築するためには日本人の意識改革が欠かせない。そうした議論を喚起することが求められている。政策提言をミッションとするシンクタンクの役割に大きな期待がかかる。

 

「研究理事」というのは役員として位置付けられ、2年前に新設された。他の役員と違うのは、売り上げに直結しない社会貢献活動を積極的に展開する点だ。


「クライアントは、その分野でのプロ集団だ。専門分野について助言することは限られてしまう。ただ、どんな組織でも利益に結びつく点は見ているが、安全管理などには目が行き届かないことががままある。人間はネガティブな部分には目をそむける習性があるからだ」。第三者の視点で苦言する。そこにシンクタンクの存在意義がある。

 

「そのためには、我々も売り上げとは別な幅広い視点で物事に接し、ノウハウを蓄積する必要がある。また社会に対して情報発信していくことが重要であり、情報発信は当社のCSR(企業の社会的責任)に他ならない」。新ポスト創設の意義を力説する。

 

危機管理の最近の傾向として「市民が市民を傷つける構造」を上げる。「社会と言うのは、行政なり、大手企業なり、ある一部を悪者に仕立て上げ、批判する傾向にある。だが、科学技術が発達した現代社会にあって、だれもが加害者となり得る点を忘れてはならない」。

 

災害を分類すると、「自然災害」「産業災害」「道路交通事故」「鉄道運転事故」「家庭内事故」「自殺」とくくることができる。実はこれら災害の半分は、「市民」が加害者となるケースだ。


「科学技術が発達する以前は、その技術を使う人は限られていた。だが、今は誰もが重大事故につながるような技術を使う時代となってしまった」

 

安全・安心を議論する上では、コスト、環境負荷、調達可能性など様々な問題を勘案する必要がある。


「どのような視点を重要視して社会像を創るかを議論することが重要だ。安全を過度に重視するなど理想ばかりを掲げても意味がない。10~20年後の社会をどう創るのか考えないと、実態は動かない」と、目標設定の重要性を説く。(2/7)

 

野口和彦(のぐち・かずひこ)
1954年生まれ、佐賀県出身。1978年東京大工学部航空学科卒、三菱総合研究所入社。2003年安全政策研究部長、参与を経て05年12月から現職。専門分野はリスクマネジメント(安全工学、人間工学、危機管理)、科学技術政策。