白鶴酒造は生産量では国内日本酒メーカーのトップだ。業界のリーディングカンパニーとして清酒の需要拡大に向けた取組みを強化している。
本社のある神戸市・灘では白鶴酒造資料館を持ち、様々な参加型イベントを実施しているほか、東京・銀座の東京支社ビル6階にある「HAKUTSURU GINZA STYLE」(銀座5丁目)で日本酒のライフスタイルを積極的に情報発信している。2006年4月に開設して以来、月に1度のセミナーや展示などを行ってきた。
高瀬次長は今年1月にこの「銀座スタイル」の責任者として大阪から着任した。
「大阪支社大阪第一支店長から赴任してきた。それまではずっと営業畑で、こういったマーケティング・情報発信というのはまだ慣れない」とやや緊張気味。
それでも「日本酒の魅力には味わいのほかに、味わい方・文化・健康・美・人・限定性といった多様性がある。これらをキーワードとして発信していきたい。これまでの参加者は女性が8割。女性の口コミの力は偉大で、とにかく日本酒の魅力に触れてもらうことが大事だ」と見通しには自信を持つ。
昨年6月からは新しい試みとして、同支社の屋上で独自開発酒米「白鶴錦」の栽培を開始、昨秋に約20kgを収穫した。このほど東京・銀座で初の「試験醸造免許」を取得、その米を使った清酒を醸し、報道陣に公開した。味わいはまだ酸味が残っているものの十分な酒質を湛えたものとなった。
銀座のビルの屋上で米を収穫するのには4tの土と毎日2時間近くの水の補給が必要だったという。ビル風や照り返しにも対策をとった。「昨年の教訓を生かして今年はもっと多くの米を栽培する」予定だ。
特約店からは「売ってほしい」との声もあるが「それは無理。余りにも量が少ない。これからはスクーリング形式でセミナーを開講したいと考えている。清酒がどのように造られるのかをいわばミニチュアだが、米つくりから醸造まで体験してもらう」と今後の方針を語る。
「銀座に詳しい方に例えば“銀座の粋と清酒”といったコラボレーションの企画を考えてもいる」という。
日本酒の需要動向については「全体の流れは悪くない。一昨年あたりからメーカーと流通が一体となって燗酒推進の運動を行ったりしてやはり成果が出てきたと思う。連動してマスコミも日本酒を再発見する特集を組んだりしている」。
「ただし、昨年8月頃から残暑と暖冬傾向などあり、やや気勢がそがれたかな、という印象を持っている。しかし今年に入ってからは全国的に雪が降るなどの天候要因もあり、悪くない。大手メーカーには前年実績を上回るところも出てきた」と清酒にいよいよ底打ち感が出てきたと見る。
日本酒メーカー入社後、30有余年。日本酒の栄枯盛衰を見極めてきた。「みんな、美味しいとは言うんですよ。これは間違いない」。これからの若い世代に大いに期待している。(3/20)
高瀬裕司(たかせ・ひろし)
1949年大阪市生まれ。76年白鶴酒造入社。福岡支店長、大阪支社大阪第一支店長兼市場開発部長などを歴任。趣味はゴルフ。「白鶴の目標である前年実績比107、108。これくらいの数字を目指したいね」


