持ち込んだワインを楽しめるBYO(ブリング・ユア・オウン)システムのバール「ワイン屋」を1年前にオープンした。オーストラリア、ニュージーランドワインを専門に輸入するゴーディアンワインズが直営するワインショップに併設されたバールだが、買ったワインをその場で飲んでいく人がほとんどだ。
オーストラリアでは看板に大きく「BYO」と書かれた飲食店がたくさんあるのだという。「BYOではコルク代として持ち込み料を支払えば、ワインの持ち込みができる。このシステムだと高いワインが動く。レストランではだいたい原価の3倍くらいの価格で売られることが多いが、例えば原価千円のワインは中身は千円のワインなのだが、飲食店で飲まれるときに価格が3千円となると、おいしく感じにくくなる。飲食店がおいしいものを提供できる環境をつくりたい」と話す。
ゆくゆくはBYOを、店舗があるエリアの飲食店に広げていきたい。ワイン屋で買ったワインが持ち込めるお店を紹介する“BYOマップ”をつくり、エリア全体に人を呼び込むことで活性化させようというものだ。
「エリア内を見回すと、全ての飲食店が儲かっているわけではない。顧客は欲しいけれども、ビラをまくほどの気力はなく、内装を変えたり情報ツールに掲載する資金もないというお店、オーナー自らがやっているからそれでもやっていけるお店などいろいろあるが、顧客に来て欲しいとは思っている。チェーンではなく、個人店舗でそういうお店と協力していきたい」。
「原価+600円ぐらいでワインを提供すれば、今まで価格が高くて動かなかった商品が動くようになる。利益が半分でも商品が2倍動けば同じだし、ワインが安い分、フードで利益を得られればと考えている。お店にとって、かなり無理な投げかけであることは承知しているが、顧客目線で本当にワインを楽しませたいならば、こういうやり方もある」。
フランスやイタリアなど伝統国に比べ、オーストラリアワインの歴史は若く、柔軟な挑戦が比較的可能。利便性のあるスクリューキャップをいち早く取り入れたり、派手で目をひくデザインでワインビギナーをひきつけるなど、オーストラリアワインにはワインに対する敷居を低くし、カジュアルに楽しめる要素がたくさんある。
「観光や仕事で、オーストラリアに行く人や住んだことのある人はたくさんいて、BYOのシステムを知っていたり、食を楽しもうとする顧客側に新しいものを受け入れる準備はある。ワインをかしこまるのではなく、気軽に飲んでほしい」と話す片桐氏自身、旅行会社勤務時代に長く滞在し、安くておいしいワインをたくさん飲んだ経験がある。
「ワイン業界の先人達のおかげで、幸いにして日本ではワインに対して良いイメージがある中、せっかく外食をするならばワインを楽しんでもらいたいし、外食という“非日常感”をワインがうまく演出できるのでは」。(6/12)
片桐達也(かたぎり・たつや)
1968年東京生まれ。東京観光専門学校卒業後、旅行会社ジェットツアーで8年間オセアニアに滞在する。オセアニアでの人脈を生かし、2001年にオーストラリア・ニュージーランドワイン専門輸入会社ゴーディアンワインズを設立。2007年にオープンした「ワイン屋」では、BYOの酒場文化ごとオーストラリアを楽しめる空間を提供する。


