中村隆司氏は、製粉業界では製粉業務分野のエキスパートとして知られる。その中村氏は今年6月、オリエンタル酵母工業の代表取締役社長に就任した。
「製粉メーカー時代と違い、オリエンタル酵母工業に来てお付き合いする方々の幅が、良い意味で広がった。大学の研究者、化学・医薬品関係の方など、製粉時代に比べると様変わりした観がある」と語る中村社長。一方で、オリエンタル酵母工業のフィールドであるパン酵母を中心とした食品、酵素・補酵素等のバイオ分野に、多くの将来性を見ている。
「オリエンタル酵母工業の扱う分野の中でも、パン酵母(イースト)はトップシェアを持ち、中華麺用のカンスイでも№1シェア。バイオ分野でも、ミネラル酵母、酵素・補酵素などトップシェアを持つものが沢山ある。つまり、研究開発力が強いということであり、その力を上手く引き出し、ニーズに合った商品・サービスを提供することで、更に業容を拡大できる可能性が大きい」と語る。
オリエンタル酵母工業は先頃、08年度業績の下方修正を発表した。「バイオ事業は、計画通りの線でいきそうだが、食品事業では、お客様にお願いしている価格改定がどのように進むか、また、原材料のコストアップの影響もあり下方修正した。中でも今夏の猛暑の影響で、製パン関連製品が、近年にないほど下ブレした影響が大きい」。
ただ「秋口以降、天候も涼しくなり、パン関係にとっては良い環境になっている。下期には期待を掛けている」とも。
中村社長は、今年6月の社長就任時に、「オリエンタル酵母工業の事業として3本柱を確立させる」と方針を示した。
「一つは、従来からの柱であるパン酵母等を中心とした食品事業をより太い柱とすること」。二つ目が将来可能性を十二分に持っているバイオ事業だ。
「当社のバイオ事業は、酵素・補酵素のほか、診断薬、試薬、免疫関係、遺伝子組み換え等々、非常に幅広いが、それぞれを独り立ちさせていく。また、長浜研究所はすでに設立20年以上となり、その研究・開発力がオリエンタル酵母工業の魅力であり、将来の可能性でもある。今後とも更に、研究・開発・販売力を高めていきたい」。
三つ目は海外事業だ。バイオ分野を中心に、北米、オランダ、中国に事業所を持ち、最近ではインドに現地雇用の駐在員を配している。「当面は、これらの地域へのバイオ製品の輸出の形を採るが、近い将来、海外事業展開でのM&Aも含め、現地生産・販売などの様々なチャンスを狙いたい」と力を込める。
製粉分野から食品・バイオ分野に移ったことを中村社長はこう表現している。「ある意味、単一から輻輳世界に入った感じがする。しかし、食品・バイオとも可能性は非常に大きい。開発力を更に磨くことで、将来にわたって伸びていける楽しみがある」。
それでも、当面力が入るのは価格改定だ。原材料価格高騰はほとんどの食品産業が共通して直面している問題。「お客様に価格改定を受け入れて頂けるよう、全力で取り組んでいる。それにより、業績のバランスを図っていく」と力を込めている。(10/16)
中村隆司(なかむら・りゅうじ)
1945年生まれ、青森県八戸市出身。67年東北大学経済学部卒、日清製粉入社。94年製粉業務部長、95年取締役、2000年常務。01年7月分社化に伴い日清製粉グループ本社常務・日清製粉専務、04年日清製粉社長、07年10月日清製粉グループ本社専務、08年6月オリエンタル酵母工業代表取締役社長。趣味は囲碁、ゴルフ。


