ホーム > この人の出番 > 第66回 笠原産業 代表取締役社長 笠原健一氏

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この人の出番

栃木県産小麦の特徴生かす 笠原産業 代表取締役社長 笠原健一氏

現在では栃木県内で唯一の製粉会社となった笠原産業は「地元産小麦による多様な消費拡大」が認められ、今年4月、農水省の農商工連携88選(農林水産業者と商工業者等が連携した先進的な取組)に選出された。この11月2日には同社敷地で活動の母体となってきた「麦わらぼうしの会」の製麺、製パン業者らと共同で小麦感謝祭を開催し、地元の消費者などに県産小麦製品をアピールした。

 

県産小麦の特徴を生かした小麦粉や各種製品販売が軌道に乗っているが、社長就任前の専務時代は「自分の会社をどうするかビジョンがなかった」と振り返る。ちょうど00年に民間流通制度に移行し生産者から製粉業者が直接買うシステムになった。「しかし栃木の小麦は不人気で付加価値が付きにくい。栃木の小麦に育てられた当社としては困る。当時は農林61号だけで、不人気の理由はうどん茹で上げ後の色相と劣化だった。味の良さを訴えたが実際には需要は伸びなかった」。

 

そのころたまたま会った生産農家と製菓業者の2人に県産小麦振興の気持ちを伝えたところ、賛同してもらい、そこで得た結論は「製粉会社は結局2次加工業者(製麺、製パンなど)以外に販促しない。彼らと共にうまく動けばその先につながるかもしれない」ということ。さっそく一緒に県産小麦の振興を図る仲間を集め02年に「麦わらぼうしの会」の発足につながった。

 

「小麦粉製品は原料の小麦から製粉、2次加工と2回加工をするので、消費者にとっては原料小麦と製品のつながりが希薄になる。県産小麦をアピールするなら、そこをわかりやすく改善すること」。これが目的にもなる。

 

ちょうどその頃からワセ品種の「イワイノダイチ」が出てきた。しかし県内ではかつてワセ品種で失敗していたので農家が消極的だった。社長になったばかりだったが「品質がいいならだれでもやる。栃木の小麦だから当社がやる。それが差別化になる」と宣言し、社員の反対を押し切って播種前契約をした。

 

それが結果的には吉と出た。ASW(豪州産)に匹敵する色相で透明感があるし、粘弾性が良い。「まさに救世主だった。だから麦わらぼうしの会の活動はイワイノダイチの販促のようなものになった」と語る。

 

実際の消費に結び付けるには加工品にする必要があるが「当社は川下展開するほどの力がないので、麦わらぼうしの会の加工業者の方に委託生産をお願いしている。イアワイノダイチはタンパクが8%位と低いためうどんが作りにくいが、グルテンを最大限に形成してもらうことで解決した」と苦労を語る。

 

さらに「タマイズミ」というタンパク質の多い品種が出てきた。そばのつなぎの利用が多いが、「ピザ、パン、ラーメンなど汎用に使える」という。

 

特徴的な3つの品種が揃ったことで「いろいろな商品展開、パスタや半生ラーメン、素麺などができるようになった」。年間3万5000t扱っているうち、県内産を6000t加工しているが、こうした活動で県産小麦をさらに増やしていきたい考えだ。(12/25)

 

笠原健一(かさはら・けんいち)
1958年生まれ。81年早稲田大学理工学部卒業後、日鐵商事入社。84年笠原産業入社、01年から社長を務める。02年の麦わらぼうしの会の設立時から会長。07年に足利市教育委員に就任。趣味は囲碁、クラシック鑑賞。「艱難汝を玉にす」が座右の銘。奥さんと二人の娘さん、父母と6人家族。