山傳は、大野良和社長の祖父である大野時良氏が、1930年に練馬大根など各種野菜の漬物加工を行う大野商店を設立したことに始まる。大きな転換期は2001年に訪れた。山義食品と、たくあん製造に関する業務提携を締結。全国の漬物卸・販売・企画会社として新たなスタートを切ったのだ。昨年6月から顧客対応の迅速化を図り、本社機能を東京都中野区本町へ移している。
大野社長は、「当社は漬物で始まった会社だが、おいしい食品を開発し、提案し続けることを企業理念としている。物語性があり、作り手の思いが具現化された全国の商品を提供できる会社でありたい」と常々考え、「将来的には自社企画でヒット商品を生み出すのが夢」だという。
現在は漬物の卸売りが事業の中心で、売り上げ構成比は業務用6割に対し一般小売4割。この現状をふまえ喫緊の課題として直販部門の売り上げ拡大を挙げる。
「まずはダイレクトメールやネット通販などにより直販部門を伸ばそうとしているところだ。さらに道の駅や農産物直売店への配荷も進めている」。
全国各地の道の駅の調査では、土産物として漬物を購入する人が多いことが明らかになった。なかでも地域の特性を生かした漬物や地域限定品をうたった商品に人気が集まることに着目したという。
そこで「道の駅限定商品」を開発し、さらに土産物売り場では珍しい商品POPや「道の駅漬」のネーミングで限定感を演出した商品展開を行い、山傳は道の駅において漬物としては記録的な販売実績を実現した。ほかに酒販店でも来店客が思わず足を止める売り場提案を仕掛け好評だ。
全国には多種多様な漬物があり、ある地方では毎日当たり前のように食べている漬物でも全国レベルで見れば大変珍しいことも十分ありえる。そのような漬物の掘り起こしに際し大野社長は、作り手の思いが見事に具現化されていることは当然のこととして開発背景や歴史など、その商品に人を引き付ける魅力ある「物語性」があるかどうかを重視している。
そのうえで「物語性を持っていても消費者に伝わらなくては意味がない。消費者にその物語性を効果的に訴求することで、はじめて威力を発揮することになる」と説く。
では、物語性はどこで伝えるのか。
「それは売り場しかない。POPなどの有効活用により的確な商品情報を売り場で消費者に伝えていく。したがって売り場における営業マン的な役割をPOPが担うことになる」。
以前なら売り場が雑然とするなどの理由からPOP等の販促ツールを敬遠するバイヤーも少なくなかったが、小売サイドの意識も変わってきたようだ。
「食の安心・安全の観点からも消費者の選択眼が厳しさを増し、近年では詳細な商品情報を提供することは、そのままお客様サービスにつながるという認識が醸成され、販促ツールを活用できる環境が整ってきた」。(4/16)
大野良和(おおの・よしかず)
1965年東京生まれ。都内大学社会学部卒業後、家業の漬物屋の勉強のため東京農業大学研究生として2年間微生物について研究。その後、某マヨネーズメーカーへ入社。関連会社で輸入フランスワインの営業職となり、ワインアドバイザー試験に2度目の挑戦で合格。趣味は体を動かすこと、映画鑑賞。バスケットボールが得意で中学時代には東京大会で優勝。現在、ワインの知識を漬物に生かすことを考えている。


