2007年キリンホールディングスの事業会社として新たなスタートを切ったメルシャンに、昨年キリンビールから取締役常務執行役員ワイン営業本部長として着任した植木宏氏は、今年3月、同社代表取締役社長に就任した。
景気が低迷する中、同社の1~4月は、数量ベースで前年比4%増と好調に推移した。金額ベースで見ると依然厳しい状況にあるが、植木氏は「こういう時期だから、無理に金額を増やす必要はない。むしろ本数が増えていることに着目し、家庭の食卓や広い業態の店でワインが飲まれていることを前向きにとらえ、今はワイン需要拡大につなげる店頭作り、料飲店の開拓に力を入れるべきだ」と言う。
また、「ワイン市場最大の課題は、年間売上げの3割以上が11~12月に集中していること」ととらえ、年末年始やクリスマスといった最需要期だけでなく、「春にロゼワイン」「母の日は母とワインの日」「夏の冷やしワイン」など、一年を通してワインを楽しんでもらうための試みに知恵を絞る。スクリューキャップの導入や紙パックワインなども、ワインを手軽に親しんでもらう機会を増やす提案だ。
家でゆっくり食事をしながらワインを楽しむ「家飲み」需要が増えていることから、「和食に合うワイン」の普及にも意欲的だ。特にワインへの支出が増えている50~60代は、「量よりも質」を重視する層。良質の素材を使った料理に合わせ、ワインも良質のものを選びたい。そんなニーズをとらえ、たとえば「シャトー・メルシャン 甲州きいろ香」と和食とのマリアージュを提案する。
当初は試行錯誤が続いたキリンとの連携も、昨年からコンビニ、スーパーをはじめとする量販店において、主要商品のカバー率が10%以上の伸びを見せるなど、「明らかに勝ちパターン」となった。営業マンの数は、単純計算で15倍となり、顧客との接点も増えた。ビールと比べ、ワインの回転率はあまり良くない。それでも、定番外での露出やクロスMDなど、ちょっとした工夫で売れたときの喜びが大きいことと、達成感や醍醐味を感じられる商品であることがモチベーションにつながる。情報交換や人材交流も含め、グループ内の連携も軌道に乗った。
今年のワイン市場は前年並みでの推移と見ながらも、同社の目標は前年比プラス2%だ。その礎になるのは、家庭用では重点ブランドのチリ「フロンテラ」や、アメリカ「フランジア」、国産「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」であり、業務用では3000円以下のコストパフォーマンスに優れた商品を提案する「プレミアム11」である。市場全体の状況が思わしくない中、3000円以下の商品をストライクゾーンに据えた。「たしかな味わい。ひとつ上の時間」というビジョンを全社員で共有し、様々なアイディアと提案で、ワインの総需要拡大を目指す。
最後に植木家のハウスワインを尋ねると、チリ「フロンテラ カベルネ・ソーヴィニヨン」を挙げた。おもてなしには「うんちくが語れる」から「シャトー・メルシャン 甲州きいろ香」だそうだ。(6/4)
植木宏(うえき・ひろし)
1953年生まれ。76年小樽商科大学商学部卒業後、キリンビール入社。03年同社関信越地区本部長。06年同社国内酒類カンパニー営業本部営業部長。07年同社取締役営業本部営業部長。08年メルシャン株式会社取締役常務執行役員ワイン営業本部長。09年3月同社代表取締役社長。キリンビール時代から「ワインアドバイザー」資格を持つワイン愛好家。


