ホーム > この人の出番 > 第83回 キリンビバレッジ 代表取締役社長 前田仁氏

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この人の出番

収益構造改革へ舵取り急ぐ キリンビバレッジ 代表取締役社長 前田仁氏

「飲料ビジネスは、今までのように価格を下げてでも数量を売れば採算がついてくる、というビジネスモデルを見直す必要がある」。

キリンビバレッジの前田仁社長は3月の社長就任以来、収益構造改革に向けて大きく経営の舵を切った。 

「当社は、キリンレモンサービスという販売会社の時代から、キリンビールの販売と一緒になり、4倍くらいに成長した会社である。その過程の中で、成長ということが第一の主眼であったし、上場を目指すということもあったので、数字を売るということが会社としての大きな目標だった。マーケットも伸びていたため、少々無理をしても利益が出る時代を長く経験し、なかなか成長路線から抜け出せない状況だった」と振り返る。

だが、現在の飲料市場は、成長期から成熟期へと移りつつあるとされる状況だ。

「市場がゼロサムからネガティブサムとなる中で、自分たちのビジネスモデルをどこに設定するのかということが、各企業の抱える大きな課題だと思う。そのビジネスモデルをいち早く再編成・再構築した企業が、業界の中で勝ち残っていく。収益の上がるビジネスモデルを、当社はもう一度取り戻す。短期間でやり遂げないと次の成長はない」との認識を語る。 

そのためには社員全員が収益構造改革の必要性に気がつき、課題解決に向けて知恵を絞る必要がある。そこで社員には、次の3点を伝えているという。

ひとつは、しっかりとしたお得意先、ブランド別に収益が確保できる構造を作ろうというもの。商品開発や安心・安全のコストを考えて活動する必要性を説く。

「短期的には、既存の設備を使って安い価格で(商品を)出すことは可能だが、中長期的には新規ラインの設置など、メーカーとして避けて通れないコストを負担せねばならないので、それらをしっかり負担できるコスト構造に変えていきたい。そのために価格是正をして、収益構造を変えていく。本来ならば業界を挙げて取り組まねばならない課題だと認識しているが、まずはわれわれから取り組む」と決意を語る。

2つめは、強いブランドを持つことの重要性を挙げる。メーカーにとって、それこそが最大の武器だという位置づけだ。「ブランドはメーカーだけの財産でなく、顧客との共有財産」とし、いかにして陳腐化させず魅力的に将来に向かって進めるかが重要だとしている。

最後に、新カテゴリーへの挑戦の重要性を挙げる。「顧客は必ず既存の商品だけでは飽きる。メーカーの責務として、新しいカテゴリーを創造していく。まだモノにはなっていないが、(これまでのように)1年間に約150の新製品を出すヒト・モノ・カネがあるならば、その力を使って、もっとしっかりと価値を埋め込んだ商品やカテゴリーの提案をしていきたい。それが今後の課題だ」と話した。(6/11)

前田仁(まえだ・ひとし)
1950年生まれ、山梨県出身。関西学院大学経済学部卒業後、73年にキリンビール入社。94年キリンシーグラムマーケティング部長。97年キリンビールマーケティング本部商品開発部長、04年同社執行役員酒類営業本部マーケティング部長、07年同社常務執行役員国内酒類カンパニー戦略企画部長、メルシャン代表取締役専務執行役員。09年3月キリンビバレッジ代表取締役社長。社員の印象について、「人材は申し分ない。みんな素直でよく動く」と語る。