世界の「岩塩」に魅せられ、その輸入・販売に後半生を懸けた男がいる。その男、大嶋稔氏は、構想20年、現地調査、マーケット調査を綿密に行った後、昨年末に岩塩の輸入・販売を行う「ラピスジャパン合同会社」を千葉県佐倉市に立ち上げた。
大嶋氏は、「岩塩を扱う会社は日本に多数あるが、弊社程、世界中の多くの場所から岩塩を輸入している会社はないと自負している」と、取り扱っている岩塩の豊富さを強調する。
若い頃、多くの友人達から、様々な国の色鮮やかな岩塩をお土産にもらい、その美しさも去ることながら、海水塩とは異なる色や味に感動したのが、塩の世界に入るきっかけとなったという。折しも、長らく国営事業として塩を担ってきた専売公社が、民営化されてJTとなった(1985年4月)後の頃だった。
既にその頃から、大嶋氏はいずれ「塩」は自由化されると予想し、事業化を構想していたという(完全自由化は02年4月)。
日本では、岩塩を食用に使う習慣がないため、岩塩というのは、ほとんどの日本人にとって日常的ではない存在だが、世界には岩塩が主流の国や地域が数多くあり、当然それに伴う歴史や文化もある。
大嶋氏によると、「岩塩は、概ね海水が閉じ込められて数千万年から数億年前に形成された塩の結晶で、それ自体地球の神秘だが、さらに興味深いのは、それぞれの岩塩に人の歴史が絡んでいること。例えば、パキスタンの岩塩は2300年前に、かのアレクサンダー大王が東方遠征で発見したと言われているし、ポーランドのヴィエリチカ岩塩(岩塩抗に地下宮殿があり、世界遺産)は、国家財政を支え続け、王朝時代の最盛期には、国家収入の3分の1を担った」という。
また、ヨーロッパの岩塩の山を訪ねると、ほとんどはローマの軍隊が掘り始めており、ローマは「塩探し」に真剣だったという話もある。ローマと言えば、役人の給料の一部を塩で支払っていた記録があり、これがサラリーの語源となったという話は有名である。
同社は食品企業等への卸売りが多いが、最近、ヒマラヤ岩塩に低分子のコラーゲン3000を加えた「美肌塩(びはだじお)」を発売した。塩のミネラルと低分子コラーゲンを同時に摂取することで、美容と健康への効果を図る商品である。ヒマラヤ岩塩は、海水塩に比べて、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄分等が多く含まれている。
さらに、岩塩は食用だけでなく、マイナスイオン効果もあるため、癒し岩塩チェア、癒し岩塩ベッドも企画している。
大嶋氏が次に注目しているのは、ペルーの「アンデス岩塩」。「非常に美味しく、いくつかの企業で導入が決まっている」。
佐倉市の事務所には、世界の岩塩が所狭しと並べられていたが、大嶋氏は、世界の岩塩博物館を建てるのが将来の夢だという。
自由化されたとは言え、まだまだ日本の食卓では馴染みの薄い岩塩。しかし、ワイン、チーズ、フォワグラ、生ハムなど、世界中の美味しい食べ物に貪欲な日本人ならば、きっと岩塩もその一つとして、食生活に取り入れられていくようになるだろう。(6/25)
大嶋稔(おおしま・みのる)
1956年生まれ、千葉県在住。青山学院大学文学部卒業後、食品企業等を経て、08年末、ラピスジャパン合同会社を設立。


