「人次第で地域に愛される店になる」「立地以上に人」……。インタビューの間、何度も口をついて出たのが人材の重要性だ。路面惣菜店「オリジン弁当」の500m商圏の中で、「もう一度基本に戻り、商品、調理、接客を見直して、変えるべきことは変えようとやってきた」と社長就任からの2年数カ月を振り返る。
「オリジン弁当」の従業員は店舗で1人3役。「作る」「レジを打つ」「おすすめする」をこなさねばならない製造小売業である。しかし、売る視点は忘れられがちだ。「お客様が店に入った時、商品のボリュームと販促物で訴求するのが基本。しかし、ややもすると製造業になってしまう。おいしく調理することは大事だが、『買っていただこう』『もっと売ろう』『お客様にお伝えしよう』ということも重要だ」。
そういった意味でも、人材育成が基本で、かつもっとも重要になる。加栗社長がまず取り組んだのが、現場を取り仕切る店長の改革である。「就任してからまず、3カ月に1回、店長会議を開き、今の会社の状況やこれからの取り組みを説明した。しかしその後、変化や成果をもっとタイムリーに伝えたかったため、1カ月に1回にした」という。
同時に店長になるためのライセンス制度を創設し、07年夏から運用を開始した。初級、中級、上級と取得する資格に応じてパートの時給が上がるほか、パートでも改めて店長に任命した人は賞与もある契約社員とし、働く意欲の向上を図っている。「今までは入社した数だけ辞める状況だった。今は定着率が上がってきている」と手応えを示す。
同時に取り組んできた店舗リストラも、大量出店に人材育成が追い付かなかったことが一因だ。「(社長になってから)150店舗くらい閉めた」。戦略的な閉店の大半は、昨年の半ばくらいまでにほぼ終えており、今期は関東にも路面店の出店を再開する方針を示す。
とはいえ、改革は道半ばだ。中長期的な展望については「まだ既存店は自立できていると思っていない。数字上の計画は組むが、なによりも経営理念に掲げる『健康』をもっと意識した商品作り、『お客様の健康を第一に考える』店作りをしたい。そのためには人が育たないと駄目だ。今取り組んでいることを浸透させ、土台にして、早く本来の健康などを踏まえた商品作りに取り組みたい」と語る。
現状は食事バランスガイドや栄養バランスの良い弁当も導入しているが、利用客に伝えきれていない。社内には50人を超える管理栄養士、栄養士を抱え、来春からは新卒の採用も再開する予定。こういった人材を十分に活用できるよう、改革を推し進める。
狭い商圏のなかで、地域の人に知ってもらう。「何かあったらオリジン」、そういってもらえる店に育てることが、「ロマン」だという。
前職はイオンのスーパー事業「マックスバリュ」で手腕を振るった。しかし、どうやら惣菜事業の方がお気に入りのようだ。「マックスバリュの時よりも、店舗を見ている。今はそれぐらい面白い」。スーパーよりももっと地元に近いのが、路面惣菜店。消費者との距離の近さが、このビジネスの面白さなのだろう。(7/2)
加栗章男(かぐり・あきお)
1955年、大阪府生まれ。80年ジャスコ(現イオン)入社。95年人事本部人事企画部長、04年マックスバリュ事業本部長。06年3月オリジン東秀に出向し顧問に就任。同年5月に移籍し、同年6月専務取締役管理本部長。07年3月から現職。


