昨年秋以降の世界経済不況、その後の国内消費低迷により食肉業界の環境が一段と悪化している中、5月28日の日本食肉輸出入協会の総会で新会長に就任した高田和之氏(伊藤忠商事食料カンパニー生鮮・食材部門畜産部長)。食肉業界の先行きは不透明な状況にあるが、食肉の輸出入に関する当面の問題、輸出入協会としての対応の方向などについて語ってもらった。
食肉輸出入協会会長就任の抱負については、「本来、円高であれば輸入しやすい状況となるはずだが、この不況で売れ行きが悪化し、ひどい状況にある。食肉の輸出入業界の代表として、今後、いろいろな方面に働きかけて、輸入しやすい環境が作れるように努力していきたい」と語る。
今後の具体的な取り組みとしては、「会員各社の事情は違うが、その中で何を取り組んでいくか。我々商社としては、トレースバックできる安全で安心な食肉を供給していくことが基本。安全・安心をどう確保していくか、取り組めるところから取り組んでいきたい」とし、安全・安心の確保を最重点課題に挙げている。
今後、対外交渉が活発化することも予想されるが、WTO交渉については、「早期の決着を目指してもらいたい。商社はそれほど力を持っていないが、我々としても何かのお役に立てるよう努力していきたい」。また、関連して豚肉の差額関税問題については、「撤廃していただきたいというのが協会としての基本的なスタンス」と語り、WTO交渉での決着に期待する。
さらにFTA・EPA交渉の進展も予想されるが、「食肉の輸入できる国との交渉については、少しでも消費者にメリットがあるように働きかけていきたい」。米国産牛肉の月例条件の見直しは膠着状態が続いていることについては、「早期に月例条件が撤廃されるよう働きかけていく」との考えである。
昨年秋以降の世界経済不況により世界の食肉需給事情は大きく変化してきているが、輸入食肉の最近の動向について次のように語る。鶏肉については、「冷凍生肉の輸入先が限られているので昨年のような事態(在庫過剰)が起きた。サプライできる国は、実質ブラジルしかないので、ブラジルからの買いを増やし、その結果、在庫が増加して苦しい思いをしている」と、輸入増、そして在庫過剰の苦境を語る。
食肉全体の需給動向については、「胃袋として大きいのは中国とインド。この中国とインド、そしてロシアの動向で変わっていくのでは」と見る。「将来、中国やインド、ロシアが輸入を強めたら、果たして日本は安定的に買えるのかどうか。また、高級部位を買えるところ、低級部位しか買えないところが出て、仕向け先によって輸出部位が決まってくる可能性もある」と、新興国の台頭を危惧する。ただし、「今の経済環境下では、日本に売った方が安心ということもあり、当面は心配ないが、世界の経済環境が好転して他の国が買うようになれば心配」。そのためにも「国内の自給率も上げていく必要があるのでは」と語る。(7/16)
高田和之(たかだ・かずゆき)
1958年群馬県生まれ。80年伊藤忠商事入社、鶏肉、牛肉を担当し、4年間海外駐在(米国)。その後本社に戻り豚肉を担当、2004年に再び米国駐在、07年に戻り、08年4月に現職の食料カンパニー生鮮・食材部門畜産部長に就任。趣味はウォーキングと高校野球観戦。


