「コーヒーそのもののおいしさ」「パートナー(従業員)の笑顔」「サードプレイス(第三の場所)」。1996年の1号店の誕生以来、スターバックスコーヒージャパンが提供し続けてきたのは商品、サービス、そして居心地の良い空間が一体となった価値である。
売上高は1000億円に近づき、日本の外食カフェ企業の最大手に成長した。今年6月、CEOに就任した岩田氏は、目標とする事業規模の倍増に向け、「ブランドを今以上に高めていくことが大事だ」と語る。
自動車、飲料、玩具メーカーなどを経て、前職では「ザ・ボディショップ」で小売事業に携わった。
「もともとスターバックスコーヒーのファンだった」と話す。CEOに就任してから最初に感じたのは、「パートナーのブランドへの思い入れが想像以上だった」ことだという。従業員のブランドへの意識の高さは、世界中に展開するスターバックスの中で、日本の商品、サービスが最高水準にあることも裏付ける。
「日本のオリジナル商品が世界へ展開しつつあり、米国からの期待感も感じている」。世界のスターバックスをリードするため、日本独自の取り組みもできる。そんな「自由度」の高さにやりがいを感じている。
「次の1000億円に向けた足場固めをこの1~2年でやっていきたい」。同氏が目指すのは、「100年続くためにしっかりしたブランドの基盤を作っていく」ことだ。当然、業界で加速している低価格路線にはくみしない。「価格に見合った、あるいはそれ以上のバリュー、サービスを提供する」ことに徹する。
そのためには、「いかにブランドを高めていくか」が最大のテーマだ。商品、サービス、店舗の中身、立地など、ブランドを形作る全ての要素を今以上に、そして絶えず磨き込む。
昨年9月にオープンした「富山環水公園店」は、今後展開を見込む新しい店舗・立地のモデル店だ。通常の出店は本来、通行量の多い立地を狙うが、あえて公園内に出店したところ、「スターバックスが(そこに)人の流れを作ることができた」と手応えを示す。そのほか、高速道路内店舗なども好調で、新しい立地の開拓には積極的に取り組む方針だ。
規模の拡大に向けては、地方への出店に意欲をみせる。「スターバックスを待っていただいている、また、ご存知ないお客様も大勢いる。我々のミッションである『心に活力と栄養を与える』ためにも、早くそこに届けたい」。
不況の中、積極的な拡大策を打てる状況にはないが、岩田CEOは現在の環境を「100年に1度のチャンス」とみている。好立地や優れた人材を確保しやすいからだ。「目先の数字にとらわれず、いい場所があれば出せばいい」と強調する。
最大のライバルは地域ナンバー1の喫茶店だ。目と目だけで会話できるような、利用客に密着したサービスを提供できる店舗をベンチマークにしている。「ブランドとしての統一性は持ちつつも、ある程度ローカライズしていくことが大事だ」。さまざまな顔を持った、ご当地スターバックス巡りを楽しめる日も、そう遠くはないかもしれない。(10/8)
岩田松雄(いわた・まつお)
1958年生まれ、大阪府出身。日産自動車、ジェミニ・コンサルティング・ジャパン、日本コカ・コーラなどを経て、2001年にアトラス代表取締役社長に就任。03年タカラ取締役常務執行役員。05年イオンフォレスト代表取締役社長。09年6月26日から現職。


