“泡のコーヒー”定番化へ 若者人気・夜需要を獲得、各メーカーの提案相次ぐ

通常の水出しコーヒーと、泡のコーヒー(キーコーヒー)
泡のあるアイスコーヒーを提供する店舗が増えている。スターバックスなどのカフェや飲食店、夜のバーで話題となり、ホット、アイス、エスプレッソに次ぐ新しいコーヒーメニューとして定番化しそうだ。

泡のコーヒーとは、専用サーバーで窒素ガスなどを充填してコーヒーを抽出することにより、泡(クレマ)のあるコーヒーを楽しめるもの。ナイトロ(窒素)コーヒーやドラフトコーヒーなどと呼ばれている。特徴は、黒ビールのような見た目と、泡によりまろやかな味わいに仕上がることで、若者から人気が高い。コーヒー市場の課題だった若年層ユーザーや夜需要の開拓につながる施策のため、各社が提案を強化している。家庭用やPET飲料でも泡のコーヒーは増えており、注目アイテムとなっている。

キーコーヒーは、泡のアイスコーヒーを作ることのできるサーバー「COLD CREMA(コールドクレマ)」を、2017年からカフェや飲食店向けの業務用市場へ提案開始している。空気を取り込んで泡立てるため、窒素タンクも不要なコンパクトサイズ。同時に、きめ細やかなクレマとまろやかで甘みのあるコーヒーが楽しめる。カフェやホテルだけでなく、アミューズメントパークや交通系施設、社員食堂などからも引き合いがあり、約300カ所で導入されている。

同社はこのほど、「COLD CREMA」を使った泡のコーヒーについて発表会を開催、味わいの分析やアレンジメニューを紹介した。同社研究所の担当者によれば、「泡のコーヒーは、泡に苦み成分や焦げ成分が移行するため、液体のまろやかな風味を引き立てます。さらに、泡の効果は口当たりの良さだけでなく、蓋の役割もするため香りの揮発抑制にもつながります」という。

また、白い泡がキャンバスの役目を果たし、アレンジしやすいことも泡のコーヒーの特徴だ。日本カフェプランナー協会会長を務める富田佐奈栄カフェズ・キッチン学園長は同発表会で、「紅茶はフルーツティーなど幅広いメニュー提案ができたが、コーヒーのアレンジは難しかった。泡があればメニューを広げられる」と歓迎し、フルーツシロップやアルコールなどを使ったカクテルを紹介した。カフェやバーなどで、夜需要を開拓できる新たなメニュー開発が期待できそうだ。

キーコーヒー「COLD CREMA」(左)で淹れた、泡のコーヒーのアレンジメニュー(右)

キーコーヒー「COLD CREMA」(左)で淹れた、泡のコーヒーのアレンジメニュー(右)

泡のコーヒーは、専門店や家庭でも広がっている。UCCは、「アイスブリュードコーヒーサーバー」を展開する。窒素ガスを使用し、液体を攪拌させながらサーブすることで、ムースのようなきめ細かい泡を実現している。新感覚の味わいとして、バリスタからの支持も高いメニューだ。

UCC「アイスブリュードコーヒー」

UCC「アイスブリュードコーヒー」

家庭用では、ネスレ日本が「ネスカフェ ボトルコーヒー」製品を使用し、きめ細かい泡がのったアイスクレマコーヒーや、アイスクレマラテを、コードレスで家庭や屋外で簡単に作れる「ネスカフェ ゴールドブレンド ハンディ アイスクレマサーバー」を、今年4月から発売している。
 
PETボトルコーヒーでも、“泡”の波が来ている。アサヒ飲料は「ワンダ」ブランドから、泡まで楽しむ「ワンダフルワンダ」シリーズを今春から発売した。振るほどに生まれるきめ細かい泡が特徴で、なめらかな味わいが楽しめる。

ネスレ日本「ネスカフェ ゴールドブレンド ハンディ アイスクレマサーバー」、アサヒ飲料「ワンダフルワンダ」(ブラック、ラテ)

左=ネスレ日本「ネスカフェ ゴールドブレンド ハンディ アイスクレマサーバー」、右=アサヒ飲料「ワンダフルワンダ」(ブラック、ラテ)

サントリー食品の「ボス」も泡に注目し、「ボス ラテベース」と「プレミアムボス コーヒーハンターズセレクション」を泡立て、注ぐことができる独自の「ワク泡サーバー」をプレゼントするキャンペーン施策を今年4月下旬から6月下旬まで展開したところ、多くの応募があったという。
 
コーヒーの消費量は、コンビニエンスストアのカウンターコーヒーの牽引もあり増加してきたが、ここ2年は落ち着いている。市場の持続的成長に向けては、若年層の飲用機会を増やすとともに、付加価値をつけて飲む楽しさを提供する必要があり、まろやかな味わいや口当たりと、オシャレな仕上がりを提供できる泡のコーヒーの定番化が活性化のカギになりそうだ。