「サステナビリティ」は、企業の長期的な成長には持続可能な社会と環境、経済の3つの観点が、財務・非財務面で必要との考え方から、利益追求だけでなく社会と環境も重視する活動だ。これまでは“社会貢献"のイメージで捉えられていたが、業績だけでなく環境や人権への取り組みを考慮して投資するESG投資が拡大して世界で約2541兆円規模となり、最重要課題になってきた。サステナブル経営は、トップの強い意志と、自社の強みや存在意義を見つめ直すことが重要だ。日本では食品企業が積極的に取り組んでおり、牽引役として期待されている。


〈社会や環境への取り組み考慮〉

サステナビリティへの関心が急上昇している。大手新聞や雑誌社が大規模なセミナーや特集を組んだり、“サステナブル・ブランド国際会議"など、サステナビリティと経営の統合を考える組織が増え、この2年で一気にムードが変わった。

サステナビリティを取り入れたサステナブル経営は、日本では一般的に一部利益を慈善事業として社会に還元するイメージのあるCSR(Corporate Social Responsibility)を思い浮かべる人が多い。利益追求をした後に貢献するというイメージが大きいため、ビジネスとは別物と捉えられていた。しかし、現在では、業績だけでなく環境や人権への取り組みを考慮するESG投資が活発化しているため、メインストリームになってきたといえる。

ESG投資とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字から名付けられた投資のやり方だ。きっかけは国連が06年に機関投資家に向けて、責任ある投資を呼びかけたことであり、年々拡大してきた。14年から16年までの2年間では、25.2%増加の2541兆円という莫大な額となり、世界全体の投資の約4分の1の規模にあたる。経済の主役となりつつある若いミレニアル世代(1980年代から2000年代生まれの新世代)からの人気が高いため、今後もこの流れは続くだろう。ESG投資全体のうち、日本の構成比は、ヨーロッパの52%やアメリカの21%に比べて少ないが、12年時の0.2%から昨年は3.4%へと急拡大した。

今春には、公的年金の運用を担当しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、ESG投資を積極的に進め、約1兆円の資金を運用すると発表。さらに、今月はESG投資の債券分野への投資を見据え、世界銀行グループと共同研究も始めると報じられている。

とはいえ、サステナビリティを軸に据えた経営は、原料調達先も含めたバリューチェーンの見直しや、全従業員の意識改革などが必要であり、メーカーにとって短期的にはリターンが低いため、中長期的な視野で取り組む姿勢が必要だ。

一方で、サステナビリティに取り組むことは、企業の競争力向上につながるという考え方が脚光を浴びている。これは、ネスレがちょうど10年前の07年に提唱し、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が広めたCSV(共通価値の創造、Creating Shared Value)である。CSVは、事業活動を通じて社会的な問題を解決することこそが企業の使命・責任であり、同時にビジネスチャンスであるというもの。ネスレ日本はこの数年間に目を見張る売り上げ・利益成長を遂げているが、背景には顧客の問題解決というマーケティングの考え方を、CSVの実践で取り入れたことが大きい。

サステナビリティは、投資環境の変化もあり、もはや世界進出を目指す企業だけが意識するものではない。国内企業の持続的成長においても、避けては通れない課題である一方、ビジネスを広げるチャンスにもなる。今回の特集では、積極的に取り組む6社の活動を紹介する。

〈食品産業新聞2017年10月16日付「サステナビリティ特集」より〉

 

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