キユーピー研究開発本部技術研究所 木村守氏

キユーピー研究開発本部技術研究所

木村守

きむらまもる

現職は技術研究所のプリンシパル・コーポレート・サイエンティスト。1963年静岡県生まれ。日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)獣医学部卒業。獣医師、農学博士。88年キユーピー入社。以来、ヒアルロン酸を始め卵殻膜、卵黄レシチンなどタマゴに関連する機能性素材の研究に従事。休日は自宅の近所で自転車や写真撮影を楽しむ。

ヒアルロン酸は皮膚や目、関節など広範に存在し、肌の保水や関節の潤滑などの働きがある。しかし加齢とともに減少することから、中高年に多い関節炎には関節内投与(注射)が行われている。近年、経口摂取による関節炎や美肌効果への有効性は確認されているものの、ヒアルロン酸は分子量が100万を超えるほど大きく、その吸収については諸説ある。

キユーピーでは肌の乾燥緩和効果の研究レビューを根拠に、一昨年6月にヒアルロン酸含有機能性表示食品の第1号として「ヒアロモイスチャー240」を発売した。木村氏は「ヒアルロン酸の肌の保水効果については確認されているものの、体内への吸収については明確になっていなかった。今回の研究により、分子量の大きいヒアルロン酸を経口摂取しても腸で吸収されることがわかった」という。その内容を9月のヒアルロン酸機能性研究会学術大会で発表した。

試験は動物にヒアルロン酸(平均分子量約30万)を経口で与え、血中と肌での低分子ヒアルロン酸濃度を液体クロマトグラフィー質量分析法で測定した。「2糖は4時間後に血中に現れたが4糖はみられず、リンパに移行したと考えられる。血液とリンパによって体の各部分に運ばれている」という。

また肌については「2糖、4糖とも6時間後には存在が認められた。これらの結果から、分解された小さい分子量のヒアルロン酸として体内に吸収されることが明らかになった」。
次にどのように分解されるのかを調べるため、ヒトの便とヒアルロン酸を反応させたところ、「ヒアルロン酸がオリゴ糖まで分解されることが分かった。腸内細菌が働きヒアルロン酸が低分子化した」とみている。

また「ヒアルロン酸のサプリメントは、良く効く人と効きにくい人がいるといわれているが、これにはその人の腸内フローラがかかわっている可能性が考えられる」という。

さてそうなるとヒアルロン酸を低分子化する細菌はなにか。木村氏は「そこが今後の最も興味のあるところ。最近は腸内細菌の分析技術が向上しており、そのノウハウを使って、効果のある細菌の同定に近づいているという実感がある。いずれ、はっきりした段階で学会発表を行いたい」。

関連する菌が分かれば、だれにでも効果が期待できるように、その菌とヒアルロン酸を合わせた商品の開発も可能だ。

この研究は同社のヒアルロン酸配合機能性表示食品(現在2アイテム発売)だけでなく、同社がヒアルロン酸を供給している健康食品メーカーに対して、より明確なエビデンスを提供できることになる。

※ヒアルロン酸=NアセチルグルコサミンとD-グルクロン酸の2つの糖の繰り返し構造。分子量は最大700万程度。最小単位は2糖(分子量約415)。

〈食品産業新聞2017年10月16日付より〉