〈サステナビリティ特集〉伊藤園、持続可能な消費と生産へ邁進

茶産地育成事業で地域の若手経営者の意欲も上がる
伊藤園は、「世界のティーカンパニー」を目指し、国内および世界で新たな食文化の創造と生活提案を行い、社会の課題解決と事業成長を両立させる“共有価値の創造(CSV)”に取り組んでいる。これは、持続可能な開発目標の内容を踏まえ、本業を通じて国際規格ISO26000の7つの中核課題(組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題、コミュニティへの参画・発展)に対応するもの。例えば、茶産地育成事業では、地域の雇用を生み出すことで、生産者の経営が安定する一方、同社も高品質な茶葉を安定調達できるようになる。ここでは、持続可能な消費と生産への活動を紹介する。

〈「茶産地育成事業」に脚光〉後継者不足解消と品質向上実現

日本のお茶の生産量は漸減傾向にあり、担い手の高齢化も深刻な問題となっている中、伊藤園は持続可能な生産と消費に向けて「茶産地育成事業」を推進している。既存の産地と契約する「契約栽培」と、新たな産地を育成する「新産地育成事業」の2つから構成され、契約栽培は約800ha、新産地育成は約400haで、両方の茶園面積を併せると約1200haに及ぶ。

これは、同社が地域の行政、組合、生産者と協力し、耕作放棄地などを活用した茶産地を育成し、機械化やIT化を含めた栽培技術・ノウハウの提供や収穫茶葉の全量買い取りを行うことで、茶葉の品質向上やコスト削減を図るもの。

茶農家にとっては、同社との契約取引により安定的な農業経営や肥料・農薬の適正使用など環境保全型農業の推進ができる。さらに、農業従事者の若返りや雇用創出など地方経済への好影響につながり、伊藤園にとっては高品質で安定的な原料調達を実現できる。まさに、自分・相手・世間の“三方よし”の関係になる取り組みだ。

〈お茶文化の啓発活動を強化〉次世代のためレガシー創出へ

2020年に向けては文化プログラム力を磨き、お茶のある豊かな食生活を通して食育活動を進め、日本文化の発信を行っていく。その代表的な取り組みは、「伊藤園大茶会」と「おいしいお茶のいれ方セミナー」であり、昨年度は1200回以上を開催している。社内外にお茶の啓発活動を行えるように94年から運営している「ティーテイスター制度」の有資格者が講師として、お茶の歴史、健康性、おいしいお茶のいれ方を、観光地や学校、公民館やスーパーなどで解説・実演している。なお、同制度は厚生労働省から16年の制度改正後の認定第1号となる社内検定認定を得た。

そして、海外81カ国を含めた累計応募数3000万句を超える日本一の俳句コンテスト「伊藤園お~いお茶新俳句大賞」は、政府推進の「beyond2020プログラム」に認証された。次世代に誇れるレガシー創出に資する文化プログラムとして認定され、さらに注目が高まりそうだ。

〈食品産業新聞 2017年10月16日付「サステナビリティ特集」より〉

年間1200回以上おいしいお茶のいれ方を伝達し、日本文化を発信

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