【取引慣行調査】「改善が認められる」停滞続く 「認められない」も変わらず

大規模小売業者から加工食品製造業者への協賛金、センターフィー、従業員派遣について2~3割の食品製造業者が要請を受けており、今回は前回に比べてやや減少した。しかし取引慣行全体について「小売り側に改善が認められる」割合は78.4%と前回よりはやや増えてが、この3年は80%手前で停滞している。

この調査は、食品産業センターが95年からほぼ毎年食品産業における取引慣行の実態を把握するために行っているもので、16年度も今年2月、加工食品メーカーへのアンケートによって実施した。無作為に抽出した食品製造業1700社にアンケート票を送付し、348社から回答を得た(有効回答率20.8%)。回答社の売上規模別構成比は、1億円から10億円未満が49.6%と最も多く、次いで10億円から50億円未満の20.5%、1億円未満が17.0と50億円未満の中小企業が87%を占める。今回から元名簿を東京商工リサーチ社に変更したため、10億円未満の小規模事業者の割合が増えた。

大規模小売店による優越的地位濫用の実態を把握するため調査項目は、「協賛金」「センターフィー」「従業員派遣」に加え、小売業者による値下げ競争の拡大の下で、「不当な値引き・買いたたき」が行われていないか、「過度の情報開示」の要求、「大規模小売業告示などの認知度」、増加している「プライベート・ブランド(PB)商品に関する要請」などを前回に引き続き実施した。

なお、食品産業センターではこの調査結果を基に、農林水産省、公正取引委員会、経産省に説明を行うとともに、流通関係7団体に優越的地位の濫用による取引慣行の改善について指導・協力要請を行っていく。

大規模小売業者との取引において、最近3年間の間に取引慣行に関して全般的に小売側に改善を認めるかの設問に対しては、「かなり改善が認められる」が16.0%(前回14.8%)、「ある程度の改善が認められる」が62.4%(同62.7%)で合計78.4%(同77.5%)と前回調査と比較し、0.9ポイント(以下P)上昇した。14年度までわずかずつでも上昇傾向にあったが、その後は80%手前で停滞傾向が続いている。

一方、「ほとんど改善が認められない」が19.9%(同21.3%)、「悪化した」が1.7%(同1.2%)あることから、依然として大規模小売業者の濫用事例は少なくないようだ。一部では「むしろ巧妙になった」という声もあるようだ。

個々の調査項目の結果については、次号から項目別に詳報する。ここでは概要をみていく。

大規模小売業者からの協賛金要求があったのは29.2%で前回比1.7P減。これに対し「応じている」は36.7%で3.9P増、応じないは6.6%と0.4P減。小規模業者が多くなったためか、大規模小売業者の要請に応じるメーカーが増加した。

センターフィーを負担している比率は37.4%と12.3P減。これも小規模業者増加の影響か。対してフィー負担とコスト削減の関係は「コスト削減分を上回る」が38.0%で9.7P減。過去最低の実績となったが、それでも4割近くがセンターフィーという名で余分な負担をしていることになる。算出基準が明らかにされていないケースは今回も6.6P低下したとはいえ、65.1%と高い。

従業員派遣を要請されたのは23.6%で4.7P減。対して「応じている」は5.6P減で12.9%、「応じない」は2.6P増の13.8%。派遣についてはメーカー側の抵抗が強い結果となった。