給食企業の東京ケータリングがデジタル化を強力推進、経理部の活躍で仕事の生産性を向上

東京ケータリング 鈴木あい氏
働き方改革や生産性向上が叫ばれる中、コロナ禍によるテレワーク推進も相まって、デジタル化を推進する企業が食品・外食業界でも増えてきている。

商品の売り手と買い手をインターネット上で結びつけ、企業間の商取引、即ち受発注や支払い請求、商品規格、契約署名などを電子化するサービス「BtoBプラットフォーム」を展開するインフォマートによると、コロナ禍に入り、従来の飲食店や外食店だけでなく、ホテル業界や給食業界でも採用が進み、中でもホテル業界では前年比1.7倍で導入が進んでいるという。

給食企業の東京ケータリングでは、2021年6月に「BtoBプラットフォーム」の稼働を開始した。紙による取引を止めることで無駄な作業が無くなり、会社全体で仕事の生産性が上がり原価率も人件費率も低下。さらには、現状をデータで可視化することで新規事業も開始した。その立役者が経理部の鈴木あい氏だ。

本社と全国の事業所・取引先間のやり取りを一手に引き受け、会社全体のデジタル化を強力に推進。従業員の働きやすい環境整備に孤軍奮闘した。2022年1月1日の電子簿保存法改正を背景に経理部の活躍に注目が集まる中、鈴木氏にDXによる変化を聞いた。

導入以前の状況を尋ねると、「当社は、2、3年ほど前に全事業所へパソコンがわたったくらいのアナログな会社だったので、デジタルで効率化できるという意識が社内にほとんどなかった」と当時を振り返る。各事業所では、紙の納品書が多くその整理が大変で、書類の紛失や転記ミスもあり、その原因究明にも時間がかかっていたという。

一方、本社では紙の請求書が一度にくるのでその整理に追われ、本社経理部は全国からくる書類を毎日遅くまで手作業で処理していたそうだ。

「事業所では取引先企業とそれぞれ個別にやり取りをしているので、本社ではその詳細が分からなかったことも課題でした。本社と事業所に横のつながりがなく、事業所ごとの仕入れ先情報を把握するのにも苦労していました」。

そのような状況が、働き方改革の流れで一変する。経理、人事、総務の仕事も見直しが図られ、DXが導入された。「BtoBプラットフォーム」稼働後の効果を尋ねると、「導入事業所では原価率も、人件費率も確実に下がり、現場では数字を見る力がどんどんついているのを感じます。本社ではその状況がデータで見えるのがとてもありがたいです。現状が可視化され、見返すことで進捗状況を確認し、PDCAサイクルを回せることが最大の効果と言えるかもしれません」と語った。

請求書を受け取る仕入れや経費の処理はもともと2人で行っていたが、今では鈴木氏1人でこなしているという。 

また、事業所へのアンケートでは、納品書を整理する時間も手間もなくなり、紙の保管がなくなった。壁に貼っていた注意喚起のメモも無くなり整理整頓ができるようになったという。さらに、導入を機に本社と各事業所の間が狭まり、会社全体でメニュー改善と好事例を共有するプロジェクトも開始した。

こうした導入効果がどんどん見えてきたことで、2021年度は社長賞を受賞。「導入時は社内外の説明とフォローが大変でしたが、デジタル化の推進で会社の事業成長に貢献できて嬉しいです」と鈴木氏は微笑んだ。

インフォマートにデジタル化の需要が拡大している要因を尋ねると、「仕入れ明細が全く見えないから取引状況を可視化したいという声とともに、最近だと、原材料高騰への対応があります。値上げは業者単位なのか、それとも食材なのかが知りたい、業者の集約がしたいといったお問い合わせが今年に入って増えており、その内実を知るため導入や資料請求されるケースが増加しています」と話す。

食品業界では、食事の変化や人手不足、コロナ対応、働き方改革、インボイス制度など劇的に環境が変化している。原材料価格の高騰もあり、アナログ情報をデジタル化し活用することで新たな事業展開へつなげる企業が今後も増えてきそうだ。