外食3月期 価格改定後も既存店好調 客単価アップでコスト増を補填

外食企業の2016年3月期決算は、一部を除いて好決算に沸いた。増収営業増益企業は45社中、半数近くの22社(前期は17社)となり、営業利益ベースによる増益企業は27社で、前期より10社増加した。円安の進行による食材仕入れ価格の高騰、人手不足を起因とする人件費の上昇などコストアップが収益を圧迫したものの、付加価値メニューが値上げ後も堅調に推移し、好決算の企業では、軒並み既存店売上高が前年を上回った。

本紙は主な上場外食企業の16年3月期決算をまとめた。それによると増収は45社中30社で昨年より1社増えた。対売上高営業利益率の平均は3・2%で、前期(2・5%)より0・7ポイント上回っている。

上位10社のうち、好決算で着地したのは、トップのゼンショーホールディングス(以下、HD)、トリドール、日本KFCHDなど。ゼンショーHDは、牛肉価格をはじめとする原材料価格の上昇影響を受けたものの回転寿司「はま寿司」を中心とする積極的な出店と、「すき家」の深夜営業再開により増収増益で着地した。牛丼の価格引き上げや、ワンコインのセットメニューの導入などバリュー感を訴求する商品投入が奏功し客単価がアップ、主力「すき家」の既存店売上高は2・9%増となった。

カッパ・クリエイトの通期における連結で、続くコロワイドの売上高は、前期比31・9%増と大きく拡大した。期初に、グループの食材購買・販売事業をコロワイドMDに一元化したことで、グループシナジー効果を発現し、営業利益も18・9%増となった。一方、グループトータルの既存店売上高は2・3%減となり、低価格回転寿司業態が当初の想定よりも苦戦を強いられたことなどが影響した。既存店売上高減少による減損損失の発生で、純利益は76・3%減となった。

トリドールは、当期利益が前期比2・6倍となる増収大幅増益を達成した。主力「丸亀製麺」の既存店売上高が20カ月連続で増加したこと、海外事業の黒字化継続が要因。M&Aにより85店舗を取得するなど海外店舗を大幅に拡大しており、グループ全体の総店舗数は1092店まで拡大した。

ファーストフード業態では、日本KFCHD、モスフードサービスともに増収増益で着地。ケンタッキーフライドチキン店舗の既存店売上高は6・8%増で、3月の価格改定後、4月は前年割れとなったがその後、巻き返した。キャンペーンや店頭で、チキンは全て「国内産」であることを訴求し続け、ブランド力の再強化を図ったことが奏功。コストの適正化を図ったことでピザハット事業の損益も改善した。また「モスバーガー」の既存店売上高も7・3%増で着地しており、「5月に主要商品で実施した値上げ後も客数が計画比より上振れで推移し、既存店は落ちなかった。商品価値が認められた」(同社)とした。定番品に加え、ご当地メニューなどの期間限定品が支持を集めた。

一方、2期連続で売上高が減少したワタミは、営業・経営利益ベースでも改善途上にあり、同じく2期連続で損失を計上した。ただし介護事業株式売却益により当期純利益は78億円(前期は129億円の赤字)で、3期ぶりに黒字に転じた。主力の国内外食事業は、不採算店の撤退、コスト削減への取り組みなどにより、赤字幅は大幅に縮小も、依然赤字の状況。16年度の施策では、既存の「和民」で一皿当たりの単価を下げ、ランチ強化の店舗や専門性の高い居酒屋などに業態転換(45店舗を予定)を進めていく。

王将フードサービスは、客数の減少、客単価アップで既存店(直営店)売上高が1・8%減となり売上高は前年を割れた。労働時間の適正化と生産性の向上を目的に実施した、月2万時間相当の営業時間短縮も大きな要因。ただし前年に未払賃金の計上があったこと、新規出店の抑制などにより営業利益は増加した。

11位以下の中堅企業で、売上高、営業利益ともに2ケタの増収増益となったのは、WDI、アスラポート・ダイニング、イートアンドなど。