しゃぶしゃぶ・すき焼き「鍋ぞう」が年40万人の訪日客をつかむ理由とは

ワンダーテーブルが運営するしゃぶしゃぶ・すき焼き食べ放題「鍋ぞう」(写真はイメージ)
〈新宿東口店のインバウンド集客数は前年比3割増の見込み〉
ワンダーテーブルが運営するしゃぶしゃぶ・すき焼き食べ放題「鍋ぞう」は、拡大する訪日外国人客への対応を他社に先駆け、積極的に推進してきた。「しゃぶしゃぶやすき焼きを自分で作って楽しむ」といったコト消費に合致する業態特徴が個人客の需要をつかみ、中国からの団体客が去った爆買い以降も安定した人気を誇っている。

インバウンド集客数が、前年比3割増での着地(19年3月期)を見込むのは新宿東口店で、外国人スタッフを積極的に採用することで言葉の壁を無くし、おもてなしを強化したことが大幅な増加につながったという。訪日客に人気の理由を同店支配人の三谷秀樹氏に聞いた。

〈多言語化、フリーWiFi、QRコード決済など外国人が利用しやすい環境を整備〉
――インバウンド対応の概要を。

「鍋ぞう」(19店舗)と姉妹ブランドの「モーモーパラダイス」(3店舗)では、約4年前から、ハードとソフトの両面で訪日外国人客の受け入れ体制を整えようと徹底してきた。ハード面では、メニューブックや販促物、WEBサイト、店頭に設置するしゃぶしゃぶの食べ方を紹介する動画などを多言語化し、フリーWiFiの設置を行うなど、外国人が利用しやすい環境を整備した。昨年11月からは、最も多い中国人客に向け、中国語圏で圧倒的な利用者数を誇るQRコード決済(Ali Pay、We Chat Pay)を導入、他社のツールを使い現地で予約決済ができる仕組みも整えた。ソフト面では、多国籍のスタッフを採用し母国語でのサービスを実施。多言語の接客用語をポケットメモ化して接客ロールプレイングに取り入れるなど、日本のおもてなしを感じて貰える対応を図っている。

当店でも中国語や韓国語など4カ国に対応できるスタッフを常時揃えており、各テーブルに専用スタッフを配置しメニューの内容から食べ方まで説明する丁寧な接客を心がけている。近年は団体客が減少し個人の旅行客が増えており、言語対応の重要性は増している。全スタッフの4割を占める外国人スタッフが、おもてなしの部分を大きく支えている状況だ。

〈「トリップアドバイザー」で全国2位の支持獲得〉
――人気をつかむ理由は。

昨年、当店は世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」において外国人に人気の日本のレストラン部門で全国2位を獲得した。「自分で作って楽しむ」というコト消費に合致する業態特徴が人気の理由だと分析しており、来店客が「トリップアドバイザー」に投稿しやすいよう鍋のパネルを用意し写真撮影に協力、投稿コメントに積極的に返信しており、口コミ強化の取り組みが高評価につながった。また姉妹ブランド「モーモーパラダイス」は台湾やタイ、中国など海外に約50店舗展開しており、いずれも連日行列ができる大人気店だ。現地の味が人気店の本店で食べられるとあって、事前に予約して来店するお客様も多い。メニューは国産牛・豚を使った税抜き4800円のコースが一番人気で、富裕層の来店が年々増加している。

「トリップアドバイザー」外国人に人気の日本のレストラン部門で全国2位を獲得

「トリップアドバイザー」外国人に人気の日本のレストラン部門で全国2位を獲得

――今後の展望を。
 
今年度は、当社全体で前年比14%増の約40万人のインバウンド客の来店を見込む。課題としてあるのは、インバウンドに対応可能な外国語が話せるスタッフが充足していない点だ。外国人スタッフを積極的に採用し、社員についてはアジア圏での現地採用も行っている。人手不足を補うツールの拡充も進めており、ラグビーW杯、オリンピック・パラリンピックの自国開催を控える中、受け入れ体制をより盤石なものにしていきたい。

「鍋ぞう」新宿東口店支配人・三谷秀樹氏

「鍋ぞう」新宿東口店支配人・三谷秀樹氏