ロイヤルホストのテークアウト堅調推移、“変化をふまえた対応”進める/ロイヤルホールディングス

ロイヤルホストはテークアウトが堅調に推移(画像はイメージ)
新型コロナウイルスで大きな影響を受けた、ロイヤルホールディングス。その中で、「ロイヤルホスト」ではテークアウト用のステーキメニューが好調に推移した。

「てんや」は定番の天丼をワンコインにして客数の確保に努めている。今回のコロナで、食シーンにも変化が見られるとの考えだ。

外食・コントラクト・機内食・ホテル事業担当の橋本哲也取締役に聞いた。

外食・コントラクト・機内食・ホテル事業担当・橋本取締役

外食・コントラクト・機内食・ホテル事業担当 橋本取締役

 
――2020年1〜6月の動向は
 
5月の後半から6月にかけて順調に推移していたのが、新型コロナウイルスの感染拡大により、7月は低下傾向にある。
 
業態別で「ロイヤルホスト」は、1月は前年比8%増で好調だった。しかし、新型コロナで状況は大きく変わった。
 
最も悪かった4月は、前年比57.9%減と大幅に落ち込んだ。その後、5月は緊急事態宣言の解除後から売り上げは伸び、6月の後半には前年比で売上は78%ほどまで回復したが、今は感染者の増加で停滞傾向にある。
 
「てんや」は、デリバリーの好調で前年比2%減まで回復していた。しかし、4月に41.9%減まで落ち込んだ。直近では約20%減まで戻すことはできた。
 
元々テークアウトには強い業態で、売り上げ全体の約30%を占めていた。ここにきて、50%近くが持ち帰りになっている。デリバリーも出前館に加えてウーバーイーツを今年から100店で導入し、存在感は増している。
 
――「ロイヤルホスト」のテークアウトは
 
ロイヤルホストでもデリバリーは取り組んでいたものの、需要は少なかった。今は店内喫食が難しいため注力している。持ち帰り専用の商品として人気の高いアンガス牛を使ったステーキメニューなどを展開したところ、テークアウト比率は上昇した。商品も12品から31品に増やした。
 
特徴的だったのは、アンガスステーキの商品が想像以上に好調だったことだ。「アンガスサーロインステーキ」(225g、税別2480円)は、ゴールデンウィークだけで1万5000食を販売した。
 
「アンガスサーロインステーキ重」(税別1343円)などお重商品も展開し、6万4000食を販売できた。贅沢をしたいというニーズにマッチしたのか、非常に好評だった。
 
――「てんや」など他の業態は
 
てんやは、5月から定番の天丼の価格を500円に戻した。2年前に500円での提供を止めてから、客数の減少傾向から脱却できずにいた。しかし、今回取り組んでみて、来店客増に大きく貢献した。

 社内の分析では、来店客の約1割はこの施策で来てくださったと見ている。私自身の実感は薄いが、デフレ傾向になるとの見方がある中でこの取り組みの成果を見ていると、価格への感度は高まっていると考えられる。
 
シズラーでもテークアウトに取り組んでいる。野菜セットの販売や、オードブル商品を提供している。ちょっと贅沢な外食気分を楽しめるようにした。ホームパーティなどをイメージした商品にしている。
 
――フローズンミール「ロイヤルデリ」は
 
ロイヤルホストなどではケースで冷凍食品を販売している。商品は25種類を展開する。味も、ショートパスタは湯せん解凍だけで手前味噌だが専門店レベル同等の商品が実現できたと思う。リピーターも増えている。
 
商品は500円台からそろえ、値ごろ感もありながら本格的なものを食べたいという需要に応えられたと思う。特に、このステイホーム期間にテレビ放映などで多くの方に知っていただけた。
 
4〜5月の動向は前月対比で約3倍まで伸びた。ロイヤルホスト店頭の物販の売り上げにも大きく貢献し、6月の店舗の分パンは売り上げが約2倍になった。
 
――消費動向に変化は見られるか
 
消費行動は確実に変化している。先ほど少し触れたが、テークアウトやデリバリーは伸長し、店内での喫食は以前よりも減っている。これは、コロナが収束した後も同様になるかもしれない。家庭でも質の高い料理を楽しめるため、わざわざ出かけて食事をするというシーンは減ってしまうかもしれない。
 
しかし、誰かと外で食事をすることはなくならない。外食ならではの雰囲気や楽しみは間違いなくある。これからはシーンに応じた使い分けが広がるかもしれない。
 
そのシーンを広げるのが、冷凍食品や、デリバリーを含めたテークアウトだ。冷凍食品はストックニーズに応えられる。仕事などで疲れたときに、美味しいものを気軽に楽しみたい人から引き合いはあると思う。テークアウトも家で温かいものを家で楽しむというシーンなどに広げられるだろう。
 
その中で、外食は日常とは違った環境で、友人や知人たちと顔を合わせて食事するという楽しみがある。対立ではなく、シーンに合わせた使い方が広がると考えている。
 
――今後の動向は
 
店舗ではアクリル板の設置を進めて安心して食事を楽しめる環境づくりを行っている。店舗でも食事を少しでも安心して楽しめるようにしていく。8月中旬までに全店で設置を終える予定だ。
 
売上は6月後半から回復してきたが、感染者は増加しており、移動を伴う事業を多く手掛ける当社にとっては厳しい。この先もコロナの影響で事業環境は左右されるだろう。ただ、楽観も悲観もしていない。両にらみで考えていく。
 
例えば、今は高速道路でもテークアウトできる商品の提供を強めている。店内よりも自分の車の中で食事をしたいという声もあり、寿司やどんぶり商品などで対応している。業態ごとで利用シーンに応じられる努力をして売り上げの確保に努めていく。レストランもこの環境に対応した事業を行っていく。
 
物理的なコロナ的な対策も大事だが、ソフトの部分や、来店された方の気持ちを考えた席の案内などホスピタリティも大切だ。こうした部分もしっかりと表現していく。来店された方それぞれに良い料理やサービスを提供できる環境づくりも進める。
 
〈食品産業新聞 2020年8月6日付より〉