【冷凍パン特集①~なぜ冷凍パンなのか】日本生活協同組合連合会、輸入商品“HATTING”10周年

冷凍パン生地や焼成済み製品はこれまで、外食・ホテル業界のサービス充実に大きな役割を担ってきた。このような業務用の領域に加えて最近では、家庭で手軽に焼きたてを味わえる、家庭用冷凍パンも見られるようになっている。日本のパン食文化において、既存の常温流通のパンだけではカバーしきれない市場領域が存在していることは明らかだ。冷凍パン特有の持ち味を気に入って、愛用している消費者層が確実に存在している。“なぜ冷凍パンなのか”–この問いに説得力のある解答を示していくことが新市場開拓の道となる。国内における冷凍パン市場の開拓に取り組みを進める各社の動きを追った。

日本生活協同組合連合会がコープ開発商品として冷凍パンの取り扱いを始めて、来年で10年目に入る。そのロングセラー商品はデンマークから輸入する「HATTINGミニロール」だ。HATTINGブランド商品で年間90万パックを売り上げ、冷凍パンの販売力は国内随一といえる。昨年からコープブランドで国産冷凍パンの取り扱いも始めた。冷凍食品部の橋野邦彦氏は「宅配システムが整った生協においては、冷凍パンは欠かせない商品」という。

橋野氏は冷凍パンの良さについて「焼き上げのひと手間はあるが、焼き立てのおいしさをそのまま楽しめること」とした上でさらに「共同購入のように宅配システムによって、商品に霜がつくなどの品質の劣化につながる状態を防ぐことができる」ことが生協での取り扱いの大きな利点となっていると指摘する。冷凍パンの販売のほとんどが宅配ルートだという。

商品展開としては主力商品となるのが「HATTINGミニロール」(=右上写真)だ。同ブランドではベーグルなど3品を取り扱っている。

「HATTING」は北欧№1の冷凍パンメーカーといわれるラントメネン・ユニベイク社(デンマーク)が展開する市販用冷凍パンブランドだ。

半焼成品で80~90%焼成した状態で急速凍結しており、解凍してオーブントースターで焼き上げるだけで、家庭で焼き立ての本格的なパンが味わえる。外はパリッと中はもっちりとした食感が特徴で、噛みしめるほどに小麦の素朴な味わいと香ばしさが広がる。

昨年11月に円安の急進に対応して値上げを実施した。1袋100円値上げして、480円となった影響もあり、今年は販売量を落としているが、「値上げ前はじわじわと伸びていた」という。

国内生産品の調達にも着手している。テーブルマークに生産委託して、コープブランドのミルクパン、クロワッサン、シナモンロール、ホイップあんぱん–を展開している。特に今春発売した「シナモンロール」(3個入り298円)の販売が好調だ。

橋野氏は品ぞろえについて「パンは冷凍適性が高いため、一般消費者も家庭で残ったパンを冷凍保存しているが、冷凍パンとは購買層が異なる。量販店のパン売場にない商品を狙っていく」とする。特に朝食シーンの主食となる商品の展開に注力する考えだ。

来年の冷凍パンの品ぞろえとしては改廃も進めて全8品での展開を計画する。特に「HATTING」では来年7月に発売10周年を記念して「ライ麦ロール」を新発売する。既存品も容量を8個入りに変更して価格を380円に戻す。

そのほかデニッシュ生地食パンやカレーパン、国内生産のミニメロンパンなどの展開も検討している。