業務用冷食で値上げの春に 原材料価格の高騰など収まらず 市販品は改定や新製品でコスト対応、効率化の限界も

11月から12月にかけて、冷凍食品メーカー各社が2019年3~4月に業務用を中心に値上げを表明している。生産の効率化などに取り組んでいるが、原材料価格の高騰や物流コストの上昇などを背景に踏み切らざるを得ない状況だ。業務用の商品は市販用と違い取引先が外食チェーンや小売店、ホテルなど幅広い。値上げを表明することで、販売先への周知を徹底する狙いもある。

今回値上げとなる商品の多くは業務用の商品だ。改定率は最も高くて15%となる。味の素冷凍食品によると、一部商品の物流費における運賃が14年と比べ10%高くなっているという。保管費は同27%と大幅に膨らんでいる。値上げを実施していない日本ハム冷凍食品も4~9月期の物流費が「二ケタ増になっている」(鶴田道太社長)と話しており、重い負担がのしかかる。

原材料費も各素材で上昇している。ヤヨイサンフーズにおいては、15年3月時点の価格と比較した場合、牛肉スライス材は10%増、豚肉スライス材は5%増、ドリアなど用の米が20%増、輸入麦が10%増となっている。水産原料においては、ズワイガニが同131%増になるなど、価格上昇が非常に厳しい状況だ。円安傾向も影響し、輸入品はコストが増加している。近年の天候不良も追い打ちをかけ、米の価格が高止まりしている他、野菜の不作、一部水産物で不漁となっている。

売り上げは各社とも昨今の市場で需要が高まっていることもあり順調に推移しているが、利益面は企業努力だけでは抑えきれない状況だ。工場で省人化を進めるほか、物流の効率化でコストを抑える動きも見られるが、減益に転じる企業もある。

家庭用については、テーブルマークが今年3月にうどんやお好み焼き、たこ焼きなどを値上げした。日本製粉や東洋水産も来春の値上げを表明している。他にもすでに実質的な値上げに踏み込んでいるメーカーもある。一部では商品リニューアルや新製品でコスト対応している。

今後はより多くの企業で家庭用製品の値上げに踏み切る可能性もある。マルハニチロは「特に米飯が厳しい。(値上げをするか)年明け早々にも結論を出したい」(米岡純一郎副社長)と述べている。日清食品冷凍も「効率化にも限界はある。改定を考えなくてはならない時期が来るのでは」(多部田雄司社長)と話す。

消費者に直接影響のある家庭用商品の値上げは、各社とも慎重に対応せざるを得ない。健全な成長に向けて、何らかの対応が迫られている。

〈冷食日報 2018年12月27日付より〉