〈冷食流通インタビュー・小売〉イオンリテール 3本の柱で冷食を訴求、高まる健康志向へのアプローチも

〈イオンリテール 商品企画本部 デイリーフーズ商品部長 宇治知英氏〉
――2018年の販売動向は

トータルで見ると堅調に推移した1年だった。冷凍野菜は野菜の相場高が影響し、2桁伸長を見せるなど上期は非常にいい動きを見せた。スナックや惣菜関連は好調だったほか、米飯や麺類、ピザグラタンなども堅調に推移した。一方で、弁当関連の消費は通年で苦戦が見られた。学校給食が増えたことに加えて少子化の影響もあり、市場全体であまりいい動きではない。ただ、新商品は全般的に順調だった。

――主な販売施策は

3つの柱で取り組んでいくつもりだ。1つに価格政策がある。その主な取り組みに「トップバリュ ベストプライス」というシリーズの投入が挙げられる。NB(ナショナルブランド)商品よりも価格を下げつつも、品質面では対等に渡り合えるような商品群で、販売は順調だ。価格設定は店舗ごとに決めることができる。

2つ目は「ヘルス&ウェルネス」だ。他社にない健康に配慮した商品で支持獲得を図る。「グリーンアイ」というシリーズから冷凍の有機野菜を販売し、非常に良い動きを見せている。こうした商品は割高なイメージがあるが、当社の商品は割高感を抑えて手に取りやすいようにした。さまざまな農家と契約し商品を何年もかけて集めて、ようやく実を結び始めたように感じる。

3つ目の取り組みが「他社にない商品の販売」だ。世界各地の味を楽しめることをコンセプトにした「ワールドダイニング」という商品群がある。「イオンワールドフェスタ」という取り組みがあり、今はそれに合わせて商品を投入している。韓国フェアを行った際にチーズタッカルビを投入するなど、取り組みの一環としてこのシリーズの商品を投入している。味は極力現地の味を再現するようにしている。

また、健康志向の高まりから、糖質を抑えた商品を第3四半期に7SKU 投入して順調に推移している。

中でも、昨年11月に発売した商品「お米のかわりに食べる カリフラワー」は、想定を超える反響で品薄状態が続いているが、商品供給は今後大きく回復する見込みだ。将来的には商品の配置を冷凍野菜コーナー以外での展開や、同商品を使ったメニューの提案なども検討する。

――販促面は

販促で大きいのは、イオンで試食販売を専属で行うスタッフがいる。別会社を設けて取り組んでいるのは当社グループだけでは。PB は宣伝費などを削減することで価格を抑えているが、この取り組みによって、コストを抑えつつも商品の魅力を深く知ってもらうことができるのでは。

他には「まいにち夜市」という施策もある。売り場で冷凍食品が売れるのは午後6時ごろで、主婦や働く人が買い物をするピークの時間から1時間ずれているというデータがある。1時間のずれで米飯やパスタなど即食商品は伸びる。こうした需要を取り込むべく、スマホアプリでクーポンを発行し、利用を促している。

――今後の取り組みは

プロモーションは、「まいにち夜市」や「火曜市」、ネットとの連携で購買意欲を刺激したい。

商品では健康という切り口が最も大きい。美味しさはもちろん、時間的な価値や商品の適用性で訴求する。最近では働く女性も増え、料理にかけられる時間は減っている。レンジで手軽にちゃんとした料理を提供できることは、時間的な価値を与えられると考えている。また、最近では少人数世帯の増加により個食のうどんが順調に推移しており、個食対応も増やしたい。強化する商品群としては、有機野菜や果実だ。カット済みの商品など簡便性の高いモノにも力を入れる。主食となるようなワントレー商品も提案し、時短ニーズや健康需要にもこたえられるようにしたい。

〈冷食日報 2019年2月26日付〉