ニチレイフーズ 業務用調理品売上1,000億円突破へ 給食ルートが伸長、「メディベジ」好調

ニチレイフーズ 松尾哲哉執行役員
ニチレイフーズは2018年度の業務用調理品の売上高が984億円と前年比1%の増収を確保した。収益面では原材料費の上昇、人手不足に起因する物流費の高騰に対して、生産性向上などコスト削減では吸収しきれず、前年から横ばいの着地となった。業務用調理品では2019年度、売上高は4%増収の1,020億円を見込む。事業部制になって初の1,000億円突破を達成するか注目される。今期新たに業務用事業部長に就任した松尾哲哉執行役員に前期の振り返りと今期の計画について聞いた。

18年度のチャネル別販売実績を見ると、惣菜と外食はともに横ばいだったのに対して、給食ルートの伸びが全体をけん引した。

惣菜業態については、市場規模としては18年に2.0%増(日本惣菜協会)と引き続き拡大したが、それを下回る結果となった。「チキン、春巻き、ハンバーグについては見込み通り販売を伸ばしたが、コロッケやメンチがトータルで苦戦した」という。コロッケや串ものは袋入りなどパック販売は好調だが、対面販売で苦戦が見られる。低価格品へ需要が傾いている面もあるが、「店舗の人手不足も影響しているのではないか」とみる。

“日常以上、ハレ未満”の価値を提案する商品群として16年11月に発売した「シェフズ・スペシャリテ」シリーズは惣菜ルートで、わかりやすい、ちょっとした贅沢が受け入れられ、引き続き「たいめいけんハンバーグ」などの販売が好調。惣菜だけでなく事業所給食も販路に位置付けている。同様のコンセプトで17年春に外食向けに発売した「ちょい飲みスペシャリテ」シリーズはバルなど専門店への販売が伸びている。これら“手の届くちょっとした贅沢”の提案は「今後も継続していく」方針だ。

給食業態については特に、医療・福祉と事業所給食が調理加工品や冷凍野菜の取り扱い増加によって約4%伸長した。冷凍野菜は「そのまま使える」シリーズや、18年秋に発売した刻み冷凍野菜の「メディベジ」の販売が伸びている。相場の変動が大きい生鮮野菜に対して「冷凍野菜の安定した価格と品質、調理現場での簡便性が市場に合っている」として、今後も成長を見込む。

商品分野別に見ると、チキン加工品は惣菜、外食、給食と各業態に満遍なく導入が進んでいる。昨年から唐揚げでは中津風にんにく醤油味など「ご当地シリーズ」の取り扱いを始めた。有名料理人監修の商品を含め、こだわりメニューとしてプラス要素になっている。

春巻は16年に品質を大幅に進化させたことが市場に受け入れられ、配荷の拡大以上に売り場での回転が伸びている。

業態別提案の深化、家庭用との連携進める19年度も主力のチキン加工品、ハンバーグ、春巻の3カテゴリーに注力する。市場規模の大きいコロッケ、メンチカツや和惣菜「ほっとするおかず」シリーズなど売り上げの基盤になっている分野も重視する構えだ。基本的な方向性として「業態別に特化した商品展開に継続して取り組む」と話す。

今春の新商品では「ボイルでサクッとコロッケ」が注目されている。もともとのターゲットである福祉給食にとどまらず、さまざまな業態から引き合いがあるという。人手不足や厨房スペースの問題、揚げ油の廃棄の悩みをもっているユーザーは多い。「外食でも惣菜でも厨房では油ちょうの形態が多いのが現状だが、将来的に転換していきたいというお客様の声もある。今後、市場が伸びていく分野だ」として、深堀りしていく考えだ。

グレイビーハンバーグの真空パック商品も好調で「今春の新商品は売上げに大きく寄与している」。

業務用事業部長としての抱負として松尾執行役員は次のように述べた。「お客様の多様性という点で変化が起きている中、将来を見据えた提案をスピードアップしていかなければならない。それが業態別に深堀りした商品提案にもつながる。量販店では家庭用と業務用の領域がミックスした状況になりつつある。当社では家庭用・業務用のそれぞれの基板はこの6年でしっかりできているので、家庭用と業務用のヨコの連携をさらに強化して、ニチレイフーズとしての成長につなげていきたい。そして個人的には、ヒット商品を出したいという思いがある」。

〈冷食日報 2019年7月18日付〉