〈ヤヨイサンフーズ営業最前線〉大豆ミート使用の「イートベジ」シリーズ展開、健康訴求で新市場創造を目指す

ヤヨイサンフーズ「大豆ミートのハンバーグ80」
ヤヨイサンフーズは、2019年秋の新商品で、重点施策の1つとして「今後市場拡大が見込まれるテーマへの着手」を掲げ、高まる健康志向に配慮した商品として中食・外食市場に向けて「イートベジ(Eat-Vege)」シリーズを8品投入。2020年春もアイテムを拡充し、現在12アイテムというボリューム感で展開している。

「植物由来の食材を食べよう!」をコンセプトに、肉の代わりに大豆たんぱくから作った「大豆ミート」を使用。野菜や豆類など植物由来の食材を使用することで、中食市場においては健康訴求商品として、外食・産業給食市場に向けては、インバウンド需要や外国人労働者にも向けて提案している。

現在はハンバーグ・メンチカツ・肉団子カテゴリー4品、フローズンチルド米飯カテゴリー4品、丼の具カテゴリー2品、期間限定のコロッケ・メンチカツ2品の合計12アイテムと幅広い商品提案を行っている。

豊島麻紀子商品企画課長によれば、インバウンド等のベジタリアン向も視野に入れつつも、まずは日本の市場の中で“健康訴求”をきちんと打ち出せる商品として開発に着手したという。

ヤヨイサンフーズ営業本部営業統轄部商品企画課長・豊島麻紀子氏

ヤヨイサンフーズ営業本部営業統轄部商品企画課長・豊島麻紀子氏

そうした中で、「通常、新カテゴリー商品は少しずつ出していくことが多いが、1~2品では売場で埋没してしまう。そのため、中食をメーンターゲットに、温惣菜、冷惣菜、米飯といった各売場に商品を届け、インパクトを出して新市場を作っていこうと多くの商品での提案となった。当社の主力カテゴリーでも常に商品開発を続けているが、お客様も新しい提案を求めており、まだやり尽くしていない分野で新機軸を打ち出そうという意図がある」と言う。
 
開発する上で難しい点は、肉を使わないという限られた原料の中で、いかに肉の風味・食感を再現できるかという点。特にハンバーグやメンチカツのように、単体で肉のおいしさそのものを前面に出した商品では肉と比較されるため難しいという。また、製造工程でも加熱して膨らまない、油が出ないなど肉とは違う挙動を示すため、量産する上では課題もあったが、現在は解消している。
 
市場としては中食および外食・産業給食の2つをメーンに据えている。これまでの商談では、双方の市場とも反響は大きく、手応えを得ているそうだ。中食市場では、スーパー惣菜などでは健康軸の取り組みが進む中で、「(袋)ひよこ豆と大豆ミート入りコロッケ」「(袋)ひよこ豆と彩り野菜のメンチカツ」といった商品はシリーズの中でも売れ筋となっている。
 
また、野菜を中心とした弁当などでは、従来は野菜の煮物だけだったようなところに植物由来のおかずを入れられることで新しいニーズの可能性も感じているそうだ。一方で、“肉を不使用”という訴求ポイントの定着にはしばらく時間がかかりそうで、粘り強く取り組んでいくことが課題だという。
 
産業給食では、企業の外国人労働者向けのほか、留学生の多い大学の食堂でもベジタリアン、ヴィーガン対応や、宗教上の観点からも要望が多いという。現時点では、まず普及させるには「美味しさ」が必要という観点もあって、原料の一部に乳・卵を使用している。
 
同社でも「ベジタリアン」「ヴィーガン」を前面に出した訴求はしておらず、得意先の判断の中で使ってもらっているという。“肉を不使用”という比較的ライトな健康志向ニーズと、ベジタリアン・ヴィーガンを突き詰めたようなニーズでは受け止め方が異なり、市場の声を聞きながら、動物性原料を使わず、より美味しさも追求した商品ラインアップの展開についても検討している。
 
今後も毎季数点ずつはアイテムを拡充し、ラインアップ展開の拡充を目指す。豊島課長は方向性について「まだ国内では“イートベジ”のようなノンミートカテゴリーの市場はスタートしたばかりだが、技術開発の磨き込みを進め、お客様にお応えしていくのが第一。当社としても先行投資として始めているが、お客様の反応・声を聞くことで市場を作るとともに、商品のグレードアップを進め、先行メーカーとしての強みを出していきたい」と語る。 
 
〈冷食日報2020年4月3日付〉