ピアット、前期40期は最高益、高校給食の実現を目指す【横田社長インタビュー】

ピアット「ベルギーワッフル」
2020年は学校休業に伴い学校給食は3カ月間中止になった。その影響を大きく受けたのが学校給食を専門とする業務用食品卸である。その影響は現在も続いているのか。ピアットの横田真太郎代表取締役社長に売り上げの現況と同社が扱う食材の特徴や食育への思いなどについて話を聞いた。
ピアット 横田社長

ピアット 横田社長

 
――売り上げの現況は
 
新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響で学校休業になった39期(2020年7月期)は給食が3カ月間なくなり、売り上げは半減してしまった。しかし、40期(2021年7月期)は給食が再開したので、コロナ禍の影響の中でも7月の決算は過去最高益になった。8月から新年度が始まり、さらに成長していきたい。
 
――40期の決算概況について詳しく
 
40期の売り上げは47億9,788万円で、前期比107%で着地した。内訳は水産原料が14億924万円で同106%、冷凍野菜は13億9,618万円で同128%、調理加工品は8億2,755万円で同127%、乾物・缶詰は7億457万円で同115%、デザート類は4億6,034万円で同114%となった。すべての分野で前年を上回り、特に冷凍野菜と調理加工品は2割以上伸長した。
 
――最高益になった要因は
 
当社は学校給食を中心とする食品卸だから、給食がやっていれば仕事はあるが、給食がなければ仕事がない。コロナだから特別なことをしたわけではなく、従来と変わらず、営業の数字の目標をしっかり定めて、社員で「心を一つに」頑張った結果である。例えば、冷凍野菜では九州のメーカーの販売を強化している。
 
〈“学校給食に最高を届ける” 商品開発〉
――取り扱い食品について教えてください

 
当社は“学校給食に最高を届ける”というビジョンのもと、子どもたちが「今日の給食おいしかった!」と言ってくれる、その笑顔を生み出すために日々食材を学校現場に届けている。
 
現在の取り扱い品目は約4,000アイテム。食生活が豊かになり、好きなものを好きなだけ食べることができるようになった現代の子どもたちに、健康に配慮した商品開発を常に心がけている。減塩商品や食物アレルギーに配慮した食品、自然解凍品など昨今のニーズにも対応している。また、日本・世界の郷土料理や行事食、かみかみ献立など食育になる商品も数多く揃えている。
 
商品開発は国内に限らず、世界各地からの原料・製品の取扱いも積極的に行い、常に安全で安定した製品を全国のお客様に提供している。東京五輪があれば関連した商品を開発し、先進国首脳会議があれば参加国の食材を集めるなど、新しい取り組みを行っている。それが大きな成果になったかは分からないが、考え、探し、作る、その取り組みを続けることで学校現場に楽しさを提供できる。
 
――商品開発について詳しく
 
食べ物にはすべて物語がある。それを子どもたちにしっかり知ってもらうことが大事だ。
 
以前、おとぎ話で出てくる食べ物の再現を試みたことがある。例えば、「桃太郎」で出てくる「きび団子」を作るとなると、調べると国産のきびは生産量が少なくて値段が高いことが分かる。それでも1回作った。
 
また、当社は給食向けにベルギーのワッフルを扱っているが、日本におけるワッフルの歴史はとても古い。ワッフルは安土桃山時代にカステラと一緒に日本に伝来した。江戸に入ってきたときにはワッフルはワッフルという名称ではなく、人形焼として伝わった。人形焼のルーツをたどるとワッフルになる。そういうことを子どもたちに伝える。冷凍の小松菜も売っているが、小松菜の名称の由来も諸説ある。小松という名前の方が作ったという説もあれば、江戸川区の小松地区で作られたことが由来という説もある。
 
このように、食べ物の背景にはいろいろな物語がある。食品のお届けとともにパンフを渡して、子どもたちに伝える。食育は我々の役割である。個人的なことを言えば、世界のどこにいても日本人の子どもたちには、5月5日の端午の節句「こどもの日」に、「かしわもち」を食べてもらいたい。冷凍品なら食べてもらえる。日本の食文化を、日本人であることを学校給食の提供で伝えていきたい。

「かしわもち」

ピアット「かしわもち」

 
〈「会社として夢がないといけない」〉
――「高校給食を考える会」について教えてください

 
この会は、高校生になった子どもたちの栄養バランスの乱れに関わる問題の改善や解決を図り、高等学校完全給食の実現を目指したものだ。
 
日本における高校生の昼食実態は、中学生までは学校給食により栄養バランスが取れた食事をしているが、中学校を卒業すると、好きなものだけを食べるような食生活に一部変わり、栄養バランスからかけ離れた昼食を取ることが増えている。成長段階にある高校生にもしっかりと管理された栄養バランスの取れる給食を食べてもらい、健康な大人に育ってもらうことを願い、自治体や国に働きかけ、一校でも多く取り入れてもらうために設立した。
 
私が会長を務め、副会長はSN食品研究所の有吉義之代表取締役だ。応援企業は徐々に増えて、現在30社。これまで「食育推進全国大会」や「全国栄養教諭・学校栄養職員研究大会」に参加して普及活動を行い、政治家にも意義を訴えてきた。
 
また、高校生の昼食の実態を調べるためアンケート調査も実施している。2019年3月19日時点で4,235人の回答があり、結果をみると、学校でも賛否が分かれたが、大半はコンビニ等で簡単に昼食をとっているのが実態であり、高校に入ると極端にカルシウムの摂取量が減少していることが分かっている。
 
会の活動が日本の将来に微力ながら貢献できるよう、会員が一丸となり頑張っている。
 
――そこまで食育に取り組む理由は
 
夢がないといけない。仮に当社が売り上げ50億円でよい、社員も40名でよい、成長しなくてもよいとなるとモチベーションが上がらないだろう。何かを成し遂げるなら会社として夢を持たなくてはいけない。実際、今から5年前、35期の時に、5年後のグループの売り上げを80億にする目標を立てた。結局60億だったが、目標を立てることで頑張れる。
 
同様に、給食も、今後子どもの人口が減少するのは見えているならば、外に目を向けるしかない。高校の給食も検討すべきである。
 
〈冷食日報2021年10月26日付〉