【大手食品卸決算】利益は大幅増 業務用は回復半ば 家庭用には反動減も、低温分野の増収は市販用冷食の伸びが寄与

大手卸各社の直近本決算状況単位
2021年度の大手卸決算は、コロナ禍1年目の厳しい状況との比較であるため、大半が増益となっている。売上高は「収益認識に関する会計基準」適用のため、単純比較が難しいが、概ね微増、一部で微減となった。利益面では大幅増益も目立つ。三菱食品、日本アクセス、加藤産業(2021年9月期)、伊藤忠食品、ヤマエグループホールディングスの各社で経常利益率1%を上回る結果となった。

日本アクセスは2021年度、食品卸として売上高が首位に立った。見かけ上は減収だが実質増収となる。佐々木淳一社長は「SM(スーパーマーケット)・GMS(総合スーパー)・DRG(ドラッグストア)業態が好調に推移し売上拡大ができた。一方、CVS(コンビニエンスストア)・外食チェーンは売上が伸びない中、収益改善およびコスト削減を中心に業績が回復したことで、過去最高益を達成し、売上高・経常利益が食品卸で首位に立った」としている。フローズン分野のうち市販用冷凍食品は23.8%増。「コロナ前と比べて市販用冷凍食品が最も拡大した。内食化・簡便性・SDGs 貢献などでニーズの高まりがあった」としている。

三菱食品は、売上高はCVSを中心に一部業態で回復基調が見られたが、前年拡大した家庭内食需要の反動減などが影響し減収となった。利益面では、効率化により物流費改善などが寄与して増益に。京谷裕社長は「得意先との協議による配送回数削減や、デジタル技術による効率化、コロナ禍以降特売が減少したことによる物流の“波動”の安定化が寄与した」とした。

国分グループ本社は増収・大幅増益となった。國分勘兵衛会長は「家庭用市場は引き続き堅調に推移した。フードサービス業態は、食事を主とする飲食業は回復基調にあるが、法人需要や二次会需要に支えられた酒類を主とする飲食業は、前年同様大きな打撃を受けた。コロナ前に戻るにはかなりの時間を要する。世界情勢は不安定であり、需給バランスに加え、為替レートの変動などコスト面でも厳しい環境」とした。

加藤産業は9月決算だが、増収、営業利益・経常利益段階で増益となった。加藤和弥社長は「コロナ影響が続き、常温流通は若干プラスに、業務用酒類、海外はマイナスに振れるなど、グループの中でまだら模様となった」としている。情報システム投資が22年度以降に繰り越しとなり、営業利益は予想比で5億円ほど上乗せとなった。

三井食品はCVS、外食向けの苦戦で減収・減益。近畿統合物流センターの立ち上げコストも響いた。冷凍は不採算取引の解消や取引先の系列化の影響を受けて減収となった。

伊藤忠食品は実質的な売上高は46億円増、各段階利益で増益となった。純利益は3年連続増加、過去最高を記録した。“巣ごもり需要”が増益の主因。

ヤマエグループホールディングス(2021年10月1日からヤマエ久野の完全親会社)は増収・大幅増益となった。20年度に大幅減益となっていたことから、回復幅が大きかった。旭食品は実質増収、経常利益は前年の2.3倍と大幅増益となった。増収要因として昨年3月のヤマキ社のグループ傘下入りが寄与。地区別ではメインエリアである近畿が牽引しつつ、関東が1,000億円の大台にのった。商品別では一般食品が全体の48%を占めるが、冷食や酒類の帳合が順調に増加するなどして伸長した。

同社は2022年度に100周年を迎える。竹内孝久社長は「過去最高益を目指す」として、収益率の高い事業への注力、コスト削減、スリム化などに取り組む方針だ。

〈冷食日報2022年6月28日付〉