今年も新酒の季節がやってきた。10月30日のイタリア産新酒ノヴェッロを皮切りに、今月3日には山梨県産の新酒が解禁となり、今年30回目を迎えた日比谷公園の「山梨ヌーヴォーまつり」も、多くの人出でにぎわった。オーストリアワインの新酒ホイリゲは、聖マーティンの日である11日が解禁日。こちらも日本では15年前から紹介されている。

そしていよいよ、今週木曜日はボジョレーヌーヴォーの解禁日である。すでに年中行事として商業的にも定着し、販売ルートさえ確保すれば売り上げが見込めたボジョレーヌーヴォーは、ワイン業界でも異質の存在だ。市場はピーク時の半分以下に縮小したが、ワインが特別なものではなくなったことの表れともいえる。成田空港でカウントダウンイベントが行われるほど「ヌーヴォー(新しさ)」が話題になった時代もあれば、「安さ」ばかりがニュースになる時代もあった。そして今は、モノ消費よりコト消費の時代。サントリーは昨年よりボジョレーを囲むパーティー「ボジョパ」の提案を開始し、今年は「解禁TODAY」というテーマソングまでつくってしまった。メルシャンも自社サイトで、インスタ映えするフォトジェニックな「ボジョめし」レシピを日々更新。「おうちで乾杯」を提案している。

ワイン好きの中には、「ヌーヴォーなんて飲まないよ」と冷ややかに見る向きも多いが、ヌーヴォーはワインの楽しみ方のひとつ。普段飲んでいるワインと比べるのは、筋違いというものだ。ヌーヴォーを飲んでボジョレーワインを語られるのも、生産者にとっては不本意だろう。ボジョレーにとって最大の市場は日本とアメリカだが、アメリカ市場ではクリュ(村名)ボジョレーとヌーヴォーが50%ずつなのに対し、日本市場ではクリュボジョレーが1割しかないのだから。

オーストリア大使館でのホイリゲ解禁パーティでは今年、初の試みとして和食とのマリアージュが提案された。オーストリアワインは和食に合うと言われるが、いざ、肉じゃがやきんぴらのような家庭料理にあわせようとすると、ワインの気品が高すぎてちょっと無理があるように思う。でも、ホイリゲなら、赤でも白でも気楽に合わせられることを発見した。ボジョレーヌーヴォーも同様で、しょうゆやみりんを使った家庭料理にあわせるのが一番しっくりくる。お正月におせちを、クリスマスにケーキを食べるように、季節の風物詩として、肩ひじ張らずに家族や友達と楽しめるのがヌーヴォーだ。

毎年のように「×年に一度の出来!」とあおりたてるコピーはともかく、醸造技術の進歩に加え、地球温暖化の影響もあるのか、品質は年々よくなっているように思う(これは、山梨産新酒の会や、ホイリゲの会でも感じたことだ)。今年は、ナパやスペイン・ポルトガルで大規模な山火事があり、ワイン業界も大きな打撃を受けた。フランスも春の霜害と雹害により、収穫量は1945年以来過去最低の見通しだ。国内外問わず、自然災害のニュースが年々増えるなか、新酒は新酒として、収穫の恵みに感謝し、その年の気候や造り手に思いを巡らせながらいただきたい。

〈酒類飲料日報2017年11月14日付より〉