若者のビール離れが叫ばれて久しい。いろいろと要因はあるだろうが、一番は“ビールの重たさ”“苦味”が若者の好む味覚と離れてしまっているからだと断じて間違いないだろう。

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アサヒビールはテストマーケティングとして“透明なクラフトビア(発泡酒)”である「クリアクラフト」を、「BEER&SPICE SUPER “DRY”KITTE 丸の内店」など直営店舗4店で販売している。300ml・500円で、第1弾として6月25日から約3,000杯を発売し一気に完売した。顧客からの声を活かして味を見直し、第2弾を7月21日から販売開始した。第3弾を8月下旬から販売する予定だ。

昨今、透明な清涼飲料の販売が相次いでいるが「全く違う流れで開発していた。8年前から“MS(MIRAI SPECIAL)”のコードネームで研究していた」(開発責任者である研究開発本部開発プロジェクト部の西山雅子副課長)。西山氏は「もともとビールが大好きで入社したが、歳を取るにつれてなかなか量が飲めなくなった。マーケティング部で焼酎のブランドを担当していたときに、なんて飲みやすいんだ、と驚いたのが“大五郎”。私は究極のビールは“大五郎”のようであるべきだ、と考えた」。

一般的にビール類は、チューハイやハイボールに比べてアミノ酸含有量が多く、これが満腹感を与えるとされる。そこで「重たさ・満腹感」といったネガティブなイメージを克服した新たな可能性を目指した。当初は麦汁・若ビールを活性炭で濾過する方法を模索していたが「発酵由来の味わいがなくなるばかりか、いわゆる“炭臭”のする、ビールから離れたものになった」(同開発部)。

ひょんなことで生まれたのが、今回の製法だ。一般的に、ビール酵母が食べる栄養が麦汁中に不足していると酵母増殖の過程で不快な香り、特に硫黄臭が出るという。これの逆転の発想で「麦汁中の栄養分を極力なくす」ことによって、不快な香りを出すことなくアルコール発酵が出来た(特許出願中)。

一般的に、麦汁を仕込む過程でアミノ酸と糖は、熱によりメイラード反応を起こし、色と深い味わい・香りを生み出す。しかし、今回、麦芽の使用量を最小限にし、副原料を中心に構成するなどで麦汁中のたんぱく源(アミノ酸)を極力なくすことによりそのメイラード反応が起きず、結果、脱色工程も不要で透明な液色と発酵由来の味わいを実現したという。

「今回の開発とは違う仕込みを試験的にやっていた時に、“あれ? 透明になったけど、硫化硫黄の臭いしないじゃない? 過去、やってなかったのでは”となった。本当にひょんなことだった」(同開発部)。

加えて、一般のビール類ではあまり行わない、複数の原酒のブレンド、またハーブや香辛料から抽出した成分を加えることで、すっきり爽快な味を作り上げた。

ただ“飲みやすい”ということであれば、焼酎の炭酸割り、つまりチューハイが飲みやすい。しかし、蒸留酒は「低アルコールになると香りが薄くなる」という特徴があり、また、RTDは「味わいが軽く単調」になりがちだ。一方、醸造酒は「香り・味ともに複雑で味わいがある」が、短所として「味が重く」なる。つまり、蒸留酒と醸造酒の中間的な味わいを獲得したのが今回の商品と言えそうだ。「将来的には家庭用パッケージまで育成したい。そのためにこそ今、いろいろと開発を重ねている」と同開発部は意気込む。

筆者が試飲したところ、“重たい”“苦い”ということは全くなく、スルスルと飲めるため、杯数は増えそうだ。かといってチューハイほどの素っ気なさ、余韻のなさはない。「ビール類」であるかどうかということを超越するかもしれないし、すでに若者も気にしないだろう。若者層に刺さる開発となるか、今後を注視したい。

〈酒類飲料日報 2018年7月24日付より〉