マスター・オブ・ワイン 大橋健一氏による「シャトー・メルシャン セミナー」開催

マスター・オブ・ワイン 大橋健一氏
メルシャンは29日、同社のコンサルタントを務めるマスター・オブ・ワインの大橋健一氏を迎えた「シャトー・メルシャン セミナー」を第一ホテル東京で開催。今秋刷新する「シャトー・メルシャン」の魅力やワインツーリズムの動きについて概略以下のように説明した。

【シャトー・メルシャン 5つの強み】 国内ワイン市場に占めるメルシャンのシェアは30% 。大手ならではのQA-QC ( qualityassurance-quality control=品質保証・品質管理)は大きな強みだ。さらに日本初のワイン会社をオリジンとし、日本のワインの歴史を造った会社であること。シャトー・メルシャンを飲むことは、日本のワイン産業の歴史を口にしているということだ。また、桔梗が原×メルロー、北信×シャルドネなど、ペアリングを確立させた功績も大きい。そして、醸造技術を一人占めすることなく、ワイン産業全体でシェアしてきたこと。最後に、海外でもメダルを取りつづけられる生産者でありつづけられること。これら5点に加え、地域復興・社会貢献も人の琴線に響く大きな強みだろう。

【パッケージングの科学】 シャトー・メルシャンは商品数も多く、これまでのラベルではコンセプトによる違いがわかりにくかった。この秋からポートフォリオをわかりやすく、「アイコン」「テロワール」「クオリティ」の三層にした。「アイコン」は世界市場を意識し、プライドを体現したラインナップ。表ラベルはわかりやすくシンプルに、裏ラベルに情報を入れた。和紙と金箔を使ったラベルで上質感を表現。「テロワール」は、産地×品種で幅広いレンジを持つボリュームゾーン。エントリーレベルの「クオリティ」は、日常的に日本ワインのおいしさを楽しめるラインで、日本の食卓にもフレンドリー。「藍茜」「萌黄」「ももいろ」ではラベルにそれぞれの色に応じた帯を入れた。パッケージングは、ブランドイメージ確立にも重要な要素のひとつ。トップレンジとエントリーレンジにおいて、マーケティング起点をどちらにするかを考える必要がある。

【ワインツーリズムの効用】 ワインツーリズムは、消費者に直接アプローチできる最高の機会。同時に消費者ニーズや反応などをリサーチする機会でもある。ワインについてのありきたりなコメントだけでなく、そのワインならではの「価値」を伝えるとともに、社会貢献や地域復興など、普段は伝えられないことまでも盛り込みたい。ステレンボッシュの調査では、ワイナリービジターの6割がワインを購入している。むこうからお金をかけて来てくれて、ワインを買ってくれるのだから、ワインツーリズムをマーケティングにつなげたい。差異を明確に、メルシャンならではの価値を伝える試みが必要だ。

〈フィニッシュの美しさが共通、技術力&栽培家との信頼関係が生む一貫性〉
試飲では、シャトー・メルシャン チーフ・ワインメーカーの安蔵光弘氏とともに、各ラインから2本ずつを紹介した。「クオリティ」からは、「萌黄」「藍茜」。「日本の食卓に合うように、萌黄では甲州の、藍茜ではMBA の比率を高くした」(安蔵氏)。「テロワール」からは「岩出甲州きいろ香キュヴェ・ウエノ」「北信シャルドネ」。「岩出甲州きいろ香は、安蔵さんの真骨頂。きいろ香スタイルのトップだと思う」(大橋氏)。

「アイコン」からは「北信右岸シャルドネ リヴァリス」「椀子 オムニス」。「ポンタリオ氏のアドバイスを受け、エレガントな造りに変えた」(安蔵氏)という「オムニス」を大橋氏も「日本の誉れ。今まで飲んだ日本ワインで最高点をつけた」と称した。「ベーシックな“クオリティ”から、トップレンジの“アイコン”まで、フィニッシュの美しさは共通している。全体に流れる一貫性は、メルシャンの技術力と栽培家との信頼関係あってのもの」(大橋氏)。

〈酒類飲料日報 2018年8月31日付より〉