スプリングバレーブルワリー19年方針発表、社会を良くするきっかけとなる「場」を創るブルワリー目指す

スプリングバレーブルワリー 島村宏子社長(左)、キリンホールディングス 磯崎功典社長(右)
スプリングバレーブルワリー(以下SVB)は30日、東京都渋谷区のスプリングバレーブルワリー東京(SVB東京)にて2018年の振り返り及び2019年の方針説明会と、新商品「磯崎さんちの小田原みかん~サワーバージョン~」の発表会を開催した。

同商品は、キリンホールディングスの磯崎功典代表取締役社長が小田原の畑で栽培した温州みかんを使用して醸造する季節限定商品で、今年で4年目。今年は昨年よりもみかんの使用量を約3割増やし、新たに柚子の果肉を使用することで程よい酸味が感じられるサワーバージョンに仕上げた。

今が旬のみかんの優しい香りと、アクセントとして使用した柚子の酸味は、同店で提供している脂身の少ないひな鳥や子羊のグリルなどとの相性も抜群。同商品発表会では磯崎社長が「みかん農家」として登壇し「今年は大豊作で、概ね2トンほど収穫することができた」と今年の収量などについて述べた。

同商品の説明の後、SVBの昨年の振り返りと今年の方針について説明が行われ、同社の島村宏子社長は次のように述べた。

島村社長=2018年は消費者におけるクラフトビールの認知度がかなり進んだ年と感じている。その人気を支える醸造場の数は2018年10月時点で379場となっており、現在は400場を超えているのではないかと思われる。また、10月から12月まで日本テレビ系列で放送されたドラマ「獣になれない私達」ではクラフトビールバーがストーリー上で重要な役割を担ったりするなど、注目度は間違いなく高まった。2019年のクラフトビール市場についても前年比1割程度成長する見通しとしており、そういった市場環境を踏まえ、我々としては「SOCIALBREWERY」を取り組みのテーマとして活動を行っていく。

「ビールの未来をわくわくしたモノとしていく」という当社の事業目的を前提とし「社会に対してどう貢献できるか」を考え、明文化したテーマとして設定。個性あふれるモノづくりを通じて、社会を少しずつ良くするきっかけとなる「場」を創るブルワリーを目指す。

具体的な取り組みとしては4つあり、1つ目は地方と東京をつなぐことで双方の活性化に貢献する「国内各地と連携したビール造り」。今年の第一弾として広島県産のはっさくを用いたビールを作る予定となっている。

2つ目は「日本産ホップのブランド化」。キリンビールが開発したホップである「MURAKAMISEVEN」の販路拡大を進めるほか、「フレッシュホップフェスタ」の展開も拡大していく。

3つ目は「京都産原料100%ビールプロジェクト」。原料をすべて京都府産とすることで、京都のさらなる活性化とブランド力向上に寄与することを目的としている。今年2月には京都府産の麦芽とホップを用いた「K80」という試作品をSVB京都とBEER TO GO で販売する予定だ。4つ目は「クラフトブルワリーならではの新しいスタイルの提案」。アルコール分が低めのビールの開発などを予定している。

また、「体験」を軸にしたブランドコミュニケーションも推進する予定。SVB以外の店舗でもSVBのビールを楽しめる「タップマルシェ」については、現在導入店舗が7,000店のところを今年の末には1万3,000店に拡大する予定としている。おおむね2倍の導入店舗数を予定しているが、これまで1店につき1ブランドしかオンメニューしていないことが多かったビールの世界で「ビールを選ぶ体験」という新たな価値をさらに広げていく。また、「496」や「on thecloud」といったコアアイテムはワインの「赤白」のようにわかりやすく分類した文章を制作し、さらには料理との相性の提案も推進する。

各店舗の取り組みとしては、最新的・革新的なスタイルはSVB東京で提案。京都では和との融合による新しいビール体験を、横浜では作り手と飲み手が集う「ブリュワーズナイト」を実施。銀座のBEER TO GO ではこれまで地方の名産品や寿司などとのペアリング企画を実施してきたが、今年2月にはスイーツとのペアリング体験の企画を予定している。

さらに、造り手とユーザーの共創コミュニティ「CLUB SVB」を応用し、SVBブランド取扱い飲食店とのあらたなコミュニティを想像することも予定している。こちらの具体的な動きについては春ごろに発表していきたい。今年も新たなビール文化創造に向けたチャレンジを続けていくので、期待してもらいたい。

〈酒類飲料日報 2019年1月31日付〉