米国チルドビーフの外貨高続く、夏の需要期の手当てに影響も

  米国産チルドビーフの外貨急騰が続くが、7月生産のオファーは、6月を天井に下げるとの見方や、ほとんど下げずに前月並みとの見方が聞かれる。6月生産は、ショートプレートが800円前後、チャックアイロー(チョイス)で1,200円前後、ボンレスショートリブ(同)3,000前後、ストリップロイン(同)で3,000円前後、またハンギングテンダーも1,250円前後とそれぞれ大幅に上昇したもようだ。7月生産もこの価格水準が続くとすれば、夏の需要期の手当てに大きく影響することになる。

5月生産・6月デリバリーの成約は、チャックアイロールは僅かに下げたが、ロイン系、ハンギングテンダーなどが上昇するも、デリバリー時期が5月下旬から6月下旬と、不需要期に入ることで強気に手当てする必要はなく、大きなインパクトはなかった。現状では、末端の売れ行きが鈍る中でも、国内の需給はタイトで、昨年のこの時期のショートプレート、チャックアイロールの余剰感とは全く違う状況となっている。

そして今回の6月生産分は、為替がほとんど前月と同じ中で、上記のように急激に外貨が上昇、手当ては引き続き不需要期にかかることで、強気に買う状況ではなく、数量は少なかったと見られる。この結果、6~7月デリバリーの米国産チルドビーフは極めてタイトな状況が続くと見られる。

外貨急騰の要因は、旺盛な米国国内の需要と中国の米国産牛肉解禁(7月16日までの解禁で合意)に向けた思惑。もともと今年の米国の出荷頭数・生産量は増加が見込まれていたが、春先から国内の需要が好調で肥育牛の出荷価格も高かったことで、生産者は早出し傾向を強め、少なめの体重で出荷することで生産量は予想を下回ることになった。需要は、米国でも出荷増により、これまで豚肉などに流れていた消費が回復した。

これに中国解禁の動向が重なり外貨が急騰した。特に50%トリミングが急騰し、現地ではこれをスライスして日本に売るよりも、そのままトリミングで販売する方が高いという状況となった。これではショートプレートの価格は上昇せざるを得ず、3月末現在で700円前後だった仲間相場は、先週は780~800円と100円近い値上がりとなった。ショートプレートは、フローズンの牛丼用需要が多く、この確保のためチルド価格も上昇するという特殊要因はあるが、他のアイテムも6月生産分がデリバリーされれば、軒並み上昇せざるを得ない。

たまたま日本にとっては不需要期だったことで、比較的冷静に受け止められているが、6月20日以降に始まる7月生産・8月デリバリー分のオファーは、夏の需要期に当たることで、影響は全く違う。仮に、6月生産分と同じ価格水準の場合、夏の需要期に、米国産のチルドビーフについては、量販店ではこれまでのような価格での特売が打てなくなる。外貨より下げて赤字で販売する訳にはいかず、外貨なりに販売できる数量を確保する、つまり必要最小限の手当てにとどめざるを得ない。国産では、交雑種、ホルスとも依然として相場高であり、数量も限られていることで国産にシフトすることは考えづらい。そうすると、豪州産が考えられるが、出荷頭数がまだ少ないため、手当てできる数量は限られ、価格的にも末端サイドが欲しい価格で手当てできるかは不透明だ。そうすると豚肉、鶏肉に移行することも考えられ、牛肉の消費自体が縮小することが懸念される。

輸入関係者は、「過去には、日本が最大のプレーヤーで、言い値で調達でき、かつ厳しいスペック管理を要求できた。しかし、中国をはじめ世界的に牛肉の需要が拡大し、かつ日本より高い価格で買う国も出てきている。ショートプレートが、いつでも安価に好きなだけ手当てできる時代ではない。量販店で安価な特売商材として売るのではなく、外貨なりで売る時代にならざるを得ない」と指摘する。相場が世界的な要因で大きく変動するなかで、量販店はじめ牛肉の販売方法、値入れも見直さざるを得ないといえる。