2017年下期の輸入ビーフ市場動向 sG発動で波乱含み

8月1日からフローズンビーフでセーフガード(sG)が発動されるなど、輸入牛肉をめぐる状況は大きく変化している。フローズンのsGについては、5月の輸入量が予想外に多かったことで、5月末時点で第1四半期(4~6月)輸入基準数量の7割に達し、残枠は2万6,704tとなった。発動の懸念があることが判明したのは5月分の通関統計が発表された6月29日であり、食肉業界としては29日、30日の2日間、フローズンビーフの通関を控え、発動を回避する努力を行った。しかし、6月の輸入量は合計で27.5%増の5.0万t、うちフローズンは2万6,817tとなり、僅か113tトリガー水準を超す結果となった。

sG発動によりフローズンビーフの関税が38.5%から50%に引き上げられた。この措置は18年3月31日まで継続される。豪州は日豪EPAにより除外され(EPA適用の輸入のみ)、豪州産のトリミング類は影響を受けない。影響を受けるのは、米国、カナダ、NZなどのバラ系、カタ系、ロイン系、トリミング系となる。その中で最も物量の多いのは、米国産のショートプレートなどバラ系だ。仮にショートプレートの外貨を1ポンド当たり2.2ドル、為替を110.2円、コストを除外して計算すると、38.5%関税では1㎏当たり740円だったものが、50%関税では801円と61円のコスト上昇になる。

チルドの関税は38.5%のままであり、これまでフローズンで持ってきたバラをチルドで輸入し、国内で急速凍結する方法も想定される。急速凍結費用、フレートなどでメリットはそう大きくはないが、少しでもコストを下げるために行われると見られる。一挙にその対応を行うと、チルドでも第2四半期で輸入基準数量を超しかねないが、業界内での調整は十分可能だ。

旧盆明けの状況をみると、8月に入ってからの東日本を中心とした悪天候の影響により、チルドビーフの販売は期待外れだった。米国産チルドは、現地高によりコスト高の玉が出回るため、8月1~2週は旧盆向けに一定量の手当てがあったが、販売が縮小する3~4週は、例年以上に手当てが絞られたと見られる。また、豪州産は7月船積みがチルドで9,860tだったことで月間では1万t前後と見られ決して潤沢ではない。しかし、東日本を中心に売れ行きは鈍く、多くの業者で在庫を抱えている。ただ、米国産のコスト高の中で慎重な手当てをした業者ではそれほど在庫は重くなく、全体では在庫は重いものの、業者によってマチマチの状況。またチルドのショートプレートが若干多めに入り、これが余剰することで安価な玉が散見される。