高病原性鳥インフルエンザはことしも侵入リスク高く、厳重警戒を-農水省

農水省は20日、東京・千代田区の霞が関プラザホールで「口蹄疫及び高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)防疫に関する日中韓等東アジア地域シンポジウム」を、21日には東京・新宿区の日本青年館ホテルで「2017年度高病原性鳥インフルエンザ防疫対策強化推進会議」を開催する。HPAIは、昨年9道県で12例が発生、ことしも近隣諸国の発生状況などから日本へのウイルス侵入リスクは高い。秋から冬にかけたHPAIのシーズンを前に国内の情報共有や、東アジア地域の連携を強化、まん延防止へ厳重な警戒態勢をとる。どちらの会議も公開で傍聴が可能。農水省のHP上から14日17時までに申し込む。

昨年は初めての発生道県もある中、青森のあひる農場での発生、北海道での極寒の中での殺処分など、各県が様々な経験を得た。このため、防疫対策強化推進会議では、新たな課題や各県の取組みを共有する。防疫対策強化推進会議には、地域の警戒強化の発端となる野鳥のHPAIの調査を行う環境省や、迅速な対応に重要となる防衛省も参加、対応を万全に行うため各省間の意識の統一も図る。ことしの防疫対策では、防寒着を家畜伝染病予防費の備蓄対象とし、消毒器も対象に加え、発生時の体制の強化を図っている。農水省の石川清康家畜防疫対策室長は「一番大切なのは、事前の準備。基本だが、農家には異常や死亡羽数が増えたら早く通報していただく。行政としてできることは、発生した際の人や物の手配、一番時間がかかることを防疫演習で準備しておく。去年は600回行っている。こういった地道な取り組みが必要だと考えている」とし、発生することを前提とした事前の準備の重要性を強調した。

21日の防疫対策強化推進会議では、ことしの国際的な発生状況や中国で発生し死亡事例も多いH7N9亜型についての情報提供、各県のこれまでの取組と本格的にシーズンインとなるこれからの取組みが報告される。北海道からは、昨年の発生を踏まえた改善点などが示される。中国のH7N9亜型については、人に感染し死亡した例も多くある。中国では家きんとの濃厚接触が人に対する感染の原因となっており、日本への同ウイルスの侵入の際には、同様の事例が起きないよう冷静な対応が必要となるため、情報提供を行う。

日中韓等東アジア地域シンポジウムでは、東アジアでの発生状況から日本への口蹄疫やHPAIの侵入リスクが高い中で、東アジア一帯でのリスク低減を目指し、関係国との協力のもと11年から開催しているもの。ことしで7回目の開催となり、日本では3回目の開催となる。日本、中国、韓国のほか、モンゴルが参加する。各国の取組の発表とリスク低減へ向けた協力についての討論が行われる。農場のバイオセキュリティーなど各国間の違いもある中で、発生の際の情報共有や、アジア地域一帯でのリスク低減に向けた協力が議論される。農水省は、「防疫作業や、バイオセキュリティーの比較による互いの改善点の発見、韓国など経験数で日本を上回る国の防疫対応経験などの情報を共有していきたい」としている。

また、農水省は12日、消費・安全局長名で都道府県知事に対し、「2017年度における高病原性鳥インフルエンザ等の防疫対策の強化について」通知を発出した。その中では、防疫対策の実施、家きん飼養農場に対する発生予防対策に関する情報提供及び、指導又は助言の実施を求めている。昨年度の発生を受けて公表された「2016年度における高病原性鳥インフルエンザの発生に係る疫学調査報告書」で「16年度はアジアのみならずヨーロッパの国々においても、様々な亜型の本病ウイルスが確認されており、17年度の秋以降の本病ウイルスの我が国への侵入リスクは高いと言わざるを得ない」と報告されたことを示し、厳重な警戒の必要性を強調している。発生予防策として、家きんの飼養農場の飼養衛生管理の確認及び指導では、立ち入り検査に長期にわたって応じない所有者に対して罰則の適用を含めて厳格に対処することなども求めた。また、環境省も都道府県に向けて「野鳥における高病原性鳥インフルエンザウイルス保有状況調査の実施について」協力を求めて通知を発出、発生農場での埋却時に欠かせない防衛省も含め各省の連携も重要となる。