輸入牛肉SG発動阻止へ需給対策の体制強化、確度の高い情報収集力が課題

16日から、ワシントンで始まる日米経済対話。麻生太郎副首相兼財務大臣が、8月に発動された冷凍牛肉でのセーフガードの運用見直しに言及、これを受け一部報道では、価格監視の期間を短く設定することを日本側が提案する、との観測を伝えている。一方、齋藤健農水大臣はこれまでのところ、制度の見直しの必要性を否定している。「日米協議で取り決めたルールであって、制度そのものに欠陥があるわけではない」。農水省は、一貫した姿勢を堅持している。ただ、同省も、発動直前まで輸入動向を把握できなかったことに忸怩(じくじ)たる思いが漂っている。大野高志畜産部長をはじめ、発動を未然に防げなかった「需給対策の緩み」に対する反省の声が内部から上がっている。「2度目は許されない。関係事業者に対して確度の高い情報を提供できるかが課題だ」。畜産部では、需給対策の体制見直しに取り組む方針だ。

7月下旬に入って、テレビ局1社が報道番組の中でSG発動の可能性を報じた。実はこの時点まで、農水省畜産部内ではSGの動きに意識が向かっていなかった。4、5月の動きが例年通りに推移するなど静かな立ち上がりを示す一方、6月に入って輸入量が急激に増えた。予想だにしなかった動きに情報を読み切れなったようだ。商社筋からも、4、5月の動きから判断して、6月に一気にSG枠を超えるとは予想できなかった、との声が漏れてくる。官民ともにSG発動に対する気の「緩み」が今回の騒動につながった、といえる。

113tオーバーというわずかな量も曲者だ。「発動の動きを意識していたとしても、確度の高い情報を逐次、業界関係筋にアナウンスしなければ、コントロールするのは難しい」。月に1度の財務省から発表される貿易統計からでは、機動的な対応をするのは困難だ。こうした実態を酌んだのが麻生発言に行きつく。「貿易統計というのは、財務マターの話であって、われわれがどうこうできる領域ではない」(農水省)。数字を的確に把握するためには、貿易統計の数字に勝るものはない。どのような形で運用できるのか期待の声もある。一方、農水省は、商社筋から積み上がってくる輸入量に関する情報の確度を高める意向だ。「正確な貿易数量を適時アナウンスしていれば、各社とも一定量の通関手続きを控え、SG発動に至らなかった。もう一度、需給対策の重要性を認識し、体制を立て直す必要がある。同じ過ちは許されない」(農水省幹部)。確度の高い情報収集力を含め、需給対策の強化に着手した。

〈畜産日報2017年10月16日付より〉