〈11月の需給展望 豚肉〉 予想以上に出荷頭数増えず、前月並の高値を維持 中盤中だるみでも相場は510~530円の展開か

豚枝肉相場は例年、10~11月に底値で推移し、11月後半からジリジリ上げて年末相場の展開になるが、今年は極端な相場の底もなく、下げても前月並みの水準を維持するものとみられる。出荷の伸び悩みがその要因だが、バラを中心に凍結物在庫が薄くなっていることも相場高の一因となっている。出荷・上場頭数については、10月後半の全国出荷が思ったほど増えていなかった半面、月前半にある程度出荷が増えてくると思われるが、稼働日の関係もあり流動的といえる。もっとも、例年は年末需要期に向けて下旬から出荷・上場頭数が増えてくる半面、寒さが一層厳しくなると鍋物需要が強まるとみられ、下旬にかけて相場が上昇してゆく流れだ。このため、「文化の日」の連休明け後から中旬にかけては一時的に中だるみとなるものの、大きな下げはなく下旬に上昇し、月間平均では上物税抜き510~530円で推移すると予測する。

[需要動向]10月の末端需要は、週末台風などの影響でロース、モモなどは芳しくなかった半面、鍋物需要の強まりでバラやウデ、カタロースが堅調だった。この傾向は11月も継続するとの見方が強い。とくにバラは凍結玉も薄いため、月後半に向けて寒さが厳しくなると生鮮物の引合いは一段と強まると予想される。また、荷動きがやや弱かったロース、モモも、3連休を前に多少動きが回復しているほか、価格次第では在庫が動いており、以前のようなロースの在庫圧迫という状況はないとみられる。

凍結物在庫は、この間にロースなど一部で凍結回しの動きがあったものの、バラを筆頭にひっ迫の状況に変わりない。コストを考えると、凍結に回すよりも生鮮で売り切る動きが大勢だが、一部は無理しても最低必要量を確保せざるを得ないため、この凍結玉の少なさが相場の下支えになりそうだ。

[供給動向]農水省の肉豚出荷予測(9月27日発表時)によると、11月の出荷頭数は前年比1%増の148.3万頭、農畜産業振興機構の需給予測(10月24日発表)では同2.1%増の149.3万頭とされている。稼働日の関係で1日当たり7.4万頭強となるが、施設の許可頭数の制約から、そこまで届くことはないとみられる。複数の産地からは共通して「(農家の)在庫状況をみると、11月もそんなに出てこない」との声が出ている。一部産地では出荷重量が増えておらず、別の産地では春先のPEDやPRRSの影響も指摘されている。機構の需給予測では、11月のチルド豚肉の輸入量は前年同月比9.6%増の3.3万tと多い。10月生産玉から各社ベリーの買付けを増やしているようで、引続き量販店の販促は、コスト面で流動性の強い国産よりも確実に利益を確保できる輸入チルドに傾注している。もっとも、ベリーの買付けを増やすといってもUS産の話で、カナダ産は生産キャパの制約から先高の状況に。そのため、国産バラへの影響は少ないとみられるものの、コンビの関係上、輸入のロイン系を含め国産ロースの需給に影響を与える恐れもがありそうだ。

[相場動向]10月の関東3市場の上物相場は508円(税抜き)となり、前年同月に比べて56円上回る高値相場となった。11月も需要は堅調に推移するなか、出荷・上場頭数はあまり増えてこないと予想されることから、業界内では引続き高値推移との見方を強めている。この間の枝肉相場高で流通サイドの採算は厳しい状況に置かれているが、12月に向けた発注への対応から、問屋筋の買いは強いものと予想される。このため、連休明け後の11月第2週から中旬にかけては上物税抜きで480~490円程度と500円を下回るが、大きく下げることはなく、むしろ下旬にかけて上昇し、第4~5週には550~570円程度まで戻すと予想する。月間平均では東京市場で510~530円(税込み550~570円)で推移すると予測する。

〈畜産日報2017年11月2日付より〉