〈18年7月の需給展望 牛肉〉関東梅雨明けも消費は鈍く、相場は6月並みか

畜産日報 2018年7月5日付
〈和去A5は2,800円前後、A3は2,150円前後〉
6月の牛肉の販売状況は、例年通り梅雨入りと不需要期のなかで動きは鈍かった。しかし、頭数が和牛で前年同月比0.9%減(概算値の積上げ)と少なかったことで、下げ幅はそう大きくはなかった。

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東京食肉市場の相場は、和去A5で32円高、A4で19円安、A3で2円安となった。A5は5月に63円安と大きく下げた反動と、もともと6月は東京食肉市場で共励会、研究会が多く、これが下支えしたと見られる。物量の多いA4が下げたのは、等級内の格差が広がり、安価な枝肉が平均を押し下げたことと、それだけ需要が弱かったことの表れといえる。交雑も5月に上昇したが6月は再び下げに転じた。

7月は、関東地方では6月末に梅雨明けとなり、7月初めから猛暑に見舞われている。量販店では、急な対応はできず、できる範囲で焼肉セットなどを増やしている程度で、国産では切落しがメーンとなっている。フェアなどは当初の予定通り14日~16日の「海の日」の連休に焦点を当てている。

国産関連では、7月下旬から旧盆向けの手当てが入るものの、年々インパクトは小さくなっており、相場を大きく引き上げるまでにはならない。日銀の短観にも表れた通り、消費者心理は力強さに欠け、牛肉の需要は盛り上がっているものの、需要を伸ばしているのは輸入牛肉が中心であり、相場高の和牛消費は勢いがない。7月は、出荷時期を調整した牛も出てくると見られ、相場的には6月並みかわずかに上回る程度と見られる。なお、天候では関東地方の梅雨明けよりも、九州地方などへの台風の直撃などが懸念される。生産地と消費地への物流が分断されれば、相場・消費に大きく影響しかねない。さらに、猛暑により牛の成育に影響が出ることも心配され、JA全農では牛舎の換気など対策を呼び掛けている。

2018年6月の東京食肉市場の規格別の価格(生体、消費税8%込み)をみると、和去A5が前月比32円高の2,801円、A4は19円安の2,408円、A3は2円安の2,145円、交雑B2は19円安の1,344円、乳去B2は14円高の1,099円となった。和去A5は、5月に下げた反動とともに、共励会などが多く底上げがあったと見られる。前年比(グラフ参照)でみると、和去A5、A3が前年をわずかに下回る一方で、交雑B2、乳去B2が前年を上回っている。

7月の生産見通しは農畜産業振興機構の予測によると、成牛の出荷頭数は0.4%増(1日当たりでは2%減)の9万800頭と見込まれる。品種別の出荷頭数は、和牛は0.9%増の4万600頭、交雑種は0.6%減の2万500頭、乳用種は0.8%増の2万8,400頭が見込まれる。輸入牛肉(チルド)は同機構の予測では、6月輸入量は0.6%増の2万3,500t、7月は0.2%減の2万2,000tを見込む。6月は豪州産の増加でわずかに前年を上回り、7月は豪州が増加も米国産の減少で前年をわずかに下回ると予測している。

現在の輸入チルドの状況をみると、豪州産がモモ・ウデなどで荷余り感があるものの、7月入荷が少なめで今後、相場は締まってくる見通し。米国産はショートプレートの投げ物が消化され相場はコストなりで動く。8月入荷は現地高値の中で前半はある程度手当てするものの、旧盆明けの後半は在庫リスクから手当ては必要最小限にとどまるといわれる。

7月の首都圏の量販店店頭では、6月末に梅雨明けしたものの、これまでと大きくは変わらず、国産、輸入とも切落し・小間の販売が多かった。一部で、在庫をやりくりして焼肉を多めに置くなども対応もあったが、すでに手当てを終えており、販売は大きく変更することはないもよう。そのためフェアについては、14日~16日の「海の日」の連休に焦点を合わせている。その後、夏休み、旧盆に向けて焼肉セット、BBQセットを拡販していく。焼肉セットでは、交雑のもも・バラセットもあるが、米国産プライムのハラミ・タンとバラを組み合わせたセットなど輸入関連も目立つ。前述のように、依然として安価な牛肉にシフトし和牛は苦戦している。

7月下旬からは旧盆需要・夏休みに向けた手当てが入るが、数年前から和牛への買いは少なくなり、インパクトは徐々に薄れている。中元需要も含めて、特需は少なく、「休日分をならせば、通常の手当てにとどまっている」との見方も聞かれる。

供給関連では、和牛の出荷は農畜産業振興機構では0.9%増を予測しており、さらに不需要期を避けて6月から肥育日数を伸ばした牛が出荷されることを考えればもう少し増えることも想定される。一方で、輸入牛肉は、豪州産は現状ではスソ物で余剰感があるものの、7月出荷は少なめであり、7月後半から絞られていく見通し。米国産は、コスト高が続いているなかで、昨年のように旧盆明けに余らせる訳にはいかず、7月後半から8月前半はある程度手当てするものの、8月後半の手当ては絞られたもようだ。

これらを勘案すれば、各品目・等級ともほぼ6月並みからわずかに上げ、和牛去勢A5で2,800円前後、同A3は2,150円前後、交雑B2は1,350円前後、乳去B2は1,100円前後とみられる。

〈畜産日報 2018年7月5日付より〉

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