農水省は肉用牛生産基盤の強化に向けたさまざまな支援措置を講じ、2016年には繁殖雌牛が6年ぶりに増加し、以降は増加傾向に反転している。また18年12月30日のTPP11発効に合わせて、肉用子牛保証基準価格の見直しを行った。そこで農水省生産局の富田育稔畜産部長に今年の畜産行政の課題と対応を聞いた。

――TPP11発効などに伴う制度改正などについて

肉用子牛生産者補給金制度は、「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づき、18年12月30日のTPP11協定発効に合わせて、肉用子牛保証基準価格を現在の経営の実情に即したものへと見直しを行った。

具体的には、保証基準価格の算定に当って、牛肉輸入自由化前7年間の農家販売価格に代えて過去7年間(11~17年度)の生産費を基礎とし、小規模な肉用子牛経営の実態も踏まえつつ、酪肉近で示している規模拡大や子牛の出荷月齢の早期化、繁殖雌牛の分娩間隔の短縮化などの近代化を促進する方向に沿ったものとする考え方に立ち、黒毛和種については「53万1,000円/頭」に決定した。

合理化目標価格は、輸入牛肉と国産牛肉との品質格差の算定に当り、従来の1~3等級に4、5等級も加味することで、黒毛和種については「42万1,000円/頭」に決定した。実態に即したものにすることで、生産者の増頭のはずみになると考えている。

――19年以降の課題は

19年は、まずはTPP11や日EU・EPA対策になる。「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づき、生産コストの削減や品質向上など畜産・酪農の体質強化対策及び経営安定対策を実施しているが、肉用子牛保証基準価格の見直しを行ったほか、牛・豚マルキンについて、畜産経営の安定に関する法律に基づく制度として、補てん率を9割に引き上げるとともに、豚マルキンの国庫在庫負担水準を引き上げた(国1:生産者1→国3:生産者1)。畜産農家の不安や懸念を払拭し、新たな国際環境の下でも安心して再生産に取り組めるよう、対応していく。

そのほか、日本の畜産は、中小規模の家族経営が大宗を占めていることを踏まえ、大規模な経営体に限らず、意欲のある経営体に対して収益力の強化や労働環境の改善などを行っていくことが必要であると認識している。労働負担を軽減するための省力化機械の導入や、作業の外部化など持続的な経営が図られるよう支援していくことが重要と考えている。さらにこれらの取組に加え、畜産クラスター事業においても、現状では地域の平均を下回る経営であっても、地域の平均規模以上に規模拡大する場合には支援対象とするほか、中山間地域の経営については、「中山間地域優先枠」を設定し、地域の平均規模に満たなくても、地域の平均伸び率以上の規模拡大を行う場合には支援対象としている。

機械導入事業では、規模拡大を要件とせず、収益性の向上に資する機械などの導入を支援している。引続き、家族経営を含め、生産性向上を推進していく。国際競争力を強化するなかで、生産性向上は避けては通れない。

家畜排せつ物の処理では、昨今畜産経営の拡大が進められる中で、それに伴い増加した家畜の排せつ物にも対応していかなければならない。そのため、18年度2次補正予算において、畜産クラスター事業に環境枠を設定することとした。また、家畜排せつ物法の本格施行から14年が経過し、その頃に整備された施設の経年劣化が見られている。このため19年度畜産物価格関連対策において、堆肥舎などの長寿命化を図ることとし、経年劣化の実態調査を行い、どのような補修を行うことが効果的か検討し、補修マニュアルを作成するとともに、地域の実情に応じた補修の実証の取組を支援する。

畜産環境整備機構が行っている畜産高度化支援リース事業の貸付枠を拡大するとともに、家畜排せつ物処理施設・機械について、新たに保証保険料と損害保険料を支援する。これらの事業を通じて、家畜排せつ物の適正な処理を支援したいと考えている。

また10月には消費税率が10%に引き上げられる。飲食料品(酒類及び外食を除く)は、現行の8%に据え置く軽減税率制度が導入されることとなる。軽減税率の適用対象となる「飲食料品」とは、人の食用又は食用に供されるもので、軽減税率が適用されるかどうかは「売り手」が販売時点で判断することとされている。

精肉店で販売される食品や食品として販売される場合の豚骨や脂は8%となるが、飼料や肥料の原材料など食品以外として販売される場合は10%となる。10月以降は精肉店などの店頭販売では、8%と10%の税率の書き分けを行う区分記載請求書の交付が求められることとなり、軽減税率対象品目しか販売しない場合であっても、「全商品が軽減税率対象である旨」や「税率毎に合計した税込対価の額」をレシートに記載する必要が生じる。これまでに全国食肉事業協同組合連合会や日本食肉加工協会などの団体を中心に食肉関係事業者向けの説明会やセミナーなどを積極的に開催してもらい、制度の理解を促している。

軽減税率に対応するためのレジ改修などに対する補助金を用意しており、軽減税率制度に関する相談窓口も設置し対応している。これらを積極的に活用いただき、事業者のみなさんにしっかりと軽減税率制度に向けた準備をしていただきたいと考えている。(つづく)軽減税率対応のレジ改修などに補助金[参考]今年10月に消費税率が10%に引上げられる。飲食料品(酒類及び外食を除く)は、現行の8%に据え置く軽減税率が導入される。軽減税率が適用される飲食料品とは、人の食用又は食用の供されるものであり、軽減財率が適用されるかは、売り手が販売時点で判断することとなる。政府では、軽減税率に対応するためのレジ改修などの補助金や、相談窓口を設置し対応している。

〈畜産日報 2019年1月23日付〉