伊藤ハム 外食・小売チャネルにアプローチ 商品開発を一緒に、NZのファンをさらに拡大

伊藤ハム 取り扱いブランド 各種ロゴ
伊藤ハムグループの今期の方針は、不透明な米中貿易問題など変動要因が多い中で、お客様との取り組みをさらに密接にし、どう安定供給するかについても協業して検討を進める。また外食や総菜チャネルへのアプローチを強化し、商品開発から一緒に取り組む。ブランド対応では、NZ産でファンを拡大、米国産では「ブルーリボンアンガス」を強化する。豪州産では「ジャックスクリーク」など、より川上の生産者と組むことで安定供給に努める。伊藤ハム食肉事業本部海外食肉本部輸入ビーフ部の乘池秀隆部長に方針やブランド対応を聞いた。
伊藤ハム 輸入ビーフ部 乘池部長

伊藤ハム 輸入ビーフ部 乘池部長

――前期実績と今期の方針は。
 
伊藤ハムの2018年度の扱い量は前年比、全体で110%、うちチルドが104%、フローズンは111%となった。フローズンが伸びたが、昨年度SGが危ぶまれるほどの輸入量の伸びに沿ったものであり、チルドも出回り量の伸びに沿った形だ。
 
今期は、TAGの動向、米中貿易問題でホルモンフリーの条件を外す話があるなど、変動要因が多すぎる。先の展開は大枠で可能性があるとしても、それがどれだけの影響があるかを考えることが必要。相場は、米国産のロインはメリハリがついているが、チャックアイは大きく下げないなど、肩系、トリミングは高値圏で推移している。その中で、お客様と「上がりそうですが、産地を変えますか、部位を変えますか」など、協力して検討を進める。今までは選択肢は豪州、NZ、米国、カナダしかなかったが、今年の2月からはEU、そして南米も入る。これらを組み合わせながらどう供給するか、ユーザーの皆さんと検討していく。
 
高コストが続く中で、日本の食品業界はデフレマーケットだ。このような状況でどう作戦を練っていくか、それが一番重要になる。昨年後半から販売部隊の取り組みが軌道に乗りだした。これをブラッシュアップし、継続して販売拡大に取り組んでいく。
 
――具体的には。
 
昨年、関東エリアにも業務用販売部を新設し効果が出ている。東名阪の大都市圏の焼肉店、ステーキハウス、肉バルなどの外食チャネルに対して、具体的な目標を掲げて強化するのが今期の方針となる。ここ数年強化している外食・CVSへの直接的アプローチを更に強化する。実はこれが、昨年度フローズンを伸ばした要因でもあり、これをもっと強化し、今後は商品開発も一緒に取り組んでいく。
 
この外食チャネルでは、ステーキ業態が伸びており、その需要を取り込むことを積極的に進めていく。その関連で、内臓と単品供給力のある米国に力を入れていく。従来、供給源としてはNZ、豪州のオセアニアが中心であり、米国がコモディティだった。しかし、今期は米国産も強化ブランドとして取り組む。日本への供給体制を整え、需要のすそ野拡大を図る。具体的には「ブルーリボンアンガスビーフ」を前面に拡大していく。
 
また、肉質、クオリティの面では、アンガス種をベースに増やす。特にチルドは「価値訴求」路線を進めコンセプトからしっかりとお客様と取り組んでいく。相場よりも、アンガス種が「安定的に供給可能」「味が良い」ことにこだわり、提案を進めていく。デフレの日本は業界全体として疲弊している。そこで、先を見て、「価値訴求」のチャレンジを進める。食肉の相場が上がり、人件費も上がる。アゲインスト要因が多い中でも、価格を上げることができる提案を行っていきたい。
 
――ブランド対応は。
 
NZ産は、着実にファンが増えている。前期は豪州産との関税差があったが、今期はそれがなくなった。特にフローズンで関税格差がなくなったことは大きい。NZ産では、ステップ1として日豪EPAがはじまる前の状況に戻す、ステップ2として増えてくる肉需要について対応方法を検討し、取り組んでいく。アンズコ社としては、世界的な需要の中でどこに供給すべきかを考えていく。その中で、対日向けとしては、どれだけ多くの価値を認めてくれるお客様を増やすかが、アンズコ社にとっても、我々にとってもプラスになる。お客様にNZ産を勧め、牛肉全体でのシェアを増やす。直営牧場のメリットを生かし、NZ産を拡販する。
 
ブランドはミドルフェッドの「カンタベリービーフ」が主軸になる。供給サイドとしても、対日も他のアジアマーケットもグレインはミドルかショートになる。しかしショートは完全に豪州産とバッティングする。また、ミドルは、日本以外でもホルモンフリーとして付加価値をつけて販売できる。さらにロングフェッドの「ファイブスタービーフ」も差別化を求めるお客様から長年支持を得ており、引き続き取り組む。
 
米国産は、JBS社ハイラム工場「ブルーリボンアンガスビーフ」を主軸にしていく。その他、JBS社の3D工場、タイソン社の245J工場、ナショナル社の2工場も継続的に取りくんでいく。「ブルーリボンアンガス」は、取り組みやすい規模を軸に、肉質、規格対応力を含め推奨していく。
 
豪州産のラインアップは基本的に変わらない。「穀物牛」「オージープレーンビーフ」は、ロックデールの頃から取り組んでおり、親しみを持っていただいている方も多く、継続的に取り組む。また、供給対策として「ジャックスクリーク」「レーベンスワース」「MDH」の3つの生産者と取り組む。この3者はパッカーの一つ川上に当たり、3者で育てた牛をパッカーでカットし我々に供給する。供給の不安定さが増す中で、川上の生産者と組むことで、パッカーと組むだけでは見えてこない、川上の状況が理解できる。生産者との取り組みは生体の価格変動を大きく受けるリスクはあるが、今後の豪州のビジネスでは、生産拠点を持っている方と取り組んでいくことが安定供給に寄与し、ひいてはお客様に魅力ある商品を提案できると考えている。昨年実施した、「ジャックスクリーク」との取り組みがいい例となった。これを継続し、豪州産でも取扱量を増やしていく。
 
【問合せ】輸入ビーフ部(03-5723-6217)
 
〈畜産日報 特別増刊号 第9号 2019Summer〉