農水省、「酪肉近」策定に向け肉用牛・食肉の課題を議論/食料・農業・農村政策審議会畜産部会

畜産日報 2019年11月8日付
農水省は11月6日、食料・農業・農村政策審議会畜産部会を開催し、酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針(酪肉近)策定に向け、肉用牛・食肉関係の課題について議論した。次回畜産部会は18日を予定しており、家畜改良目標や家畜排せつ物基本方針などを議論する。

肉用牛・食肉関係の主な課題としては、
〈1〉国内の食肉消費が増加、中国の輸入量増加などにより安定的な輸入ができなくなるおそれ
〈2〉世界の牛肉マーケット拡大による牛肉輸出の追い風
〈3〉生産基盤強化
――とした。

生産基盤強化では、繁殖雌牛・乳用雌牛の増頭、性判別精液・受精卵活用による肉用牛生産の拡大による繁殖基盤強化。畜産クラスター事業など既存施策の推進、発情発見装置や分娩監視装置などの新技術の活用、国産飼料の確保による経営の体質強化などが必要不可欠だとした。また、後継者不在の家族経営の資源(家畜や施設)を地域に円滑に継承できる環境整備など後継者不足対策、畜産農家・食肉処理施設・食肉流通業者が連携した食肉処理施設の再編整備など、生産・流通の一体的取り組みの推進も必要だとした。

国内牛肉消費増加については、若者の魚離れや消費者ニーズの変化(切り身や刺身での購入増加)により、魚介類の消費が2001年をピークに減少している一方で、牛肉消費量は近年の好景気などを背景に、焼肉・ハンバーガーなどの外食を中心に拡大し、18年には1人当たり年間消費量は6.5kg と10年間で1割強の伸長を見せている。牛肉の国内供給量は約95万tではあるが、65%に当たる62万tが輸入であり、近年はアジアの経済成長に伴う需要拡大、中国でのアフリカ豚コレラの影響により牛肉輸入環境の変化が見込まれており、とくに中国の輸入量は急速に増加している。そのため、国内の生産基盤を強化し、国産牛肉の生産量増加が必要とした。

牛肉輸出は、輸出額の8割がアジアであり、主な輸出先の香港・台湾・カンボジアで6割のシェアとなっている。アジアの食品市場は今後10年間で1.5倍に拡大する見込みで、また中国への輸出が解禁されると、さらなる輸出拡大が見込まれており、輸出拡大を図る上でも一層の国産牛肉生産増加が必要になる。直近5年間では輸出額は3倍に拡大し、18年は247億円、19年は目標額の250億円を達成見込みとなっている。和牛輸出は32カ国・地域で可能となっており、拡大を図っている。また高級部位のロインの輸出割合が高く、輸出拡大を図る上で、さまざまな部位の販売促進も重要だとした。

生産基盤強化については、肉用牛繁殖雌牛飼養頭数は16年から増加に転じているが、乳用種繁殖雌牛飼養頭数は一貫して減少傾向にあり、国産牛肉に占める乳用種のシェアが50%強であることを鑑み、国産生産量増加を図る上で、乳用雌牛の増頭が不可欠になる。

〈畜産日報 2019年11月8日付〉