〈令和2年3月の需給展望 鶏肉〉2月はジリ下げ展開、3月は特需に期待も数量消化を優先か

〈家庭内消費に期待も特需は一過性、輸入は苦戦が続く〉
2020年2月の国産生鮮販売は、数量は前年水準とそん色ないものの、過剰とも言える潤沢な供給量に支えられ、ジリ下げの展開となった。加えて暖冬の影響からか、今シーズンは鍋物需要が盛り上がることがなく、厳しい展開を強いられた。そのため、2月の月間平均相場は、日経加重でモモが596円(前年651円)、ムネが252円(255円)となり、モモでは大きく前年を下回り、ムネはわずかに下回った。

モモは前月も昨対比では30円近く下回ったが、2月は55円と大きく下回った。3月は新型コロナウイルスの影響で、外食控えや臨時休校による学校給食の停止がある一方で、量販店などでの家庭内消費促進が期待される。総合的にプラスとなるかを判断するには時期尚早であり、一過性の特需と考えるならば、期待は厳禁か。

〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラーの生産・処理動向調査によると、3月の生体処理羽数は前年同月比2.1%増と予想している。さらに生体処理重量は2.8%増と羽数・重量ともに前年を大きく上回る見通しで、増加傾向が続く。

とくに北海道・東北地区はそれぞれ2.6%増・1.4%増、南九州地区(宮崎、鹿児島、沖縄)でも、2.3%増・4.2%増と南北の主要産地での生産増が引き続き見込まれている。その他の産地でも昨対減の地域は見られず、南北九州地域では処理体重の伸長が高い傾向にあり、今後も増体が順調に進むと見られる。

農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によると、3月の国産生産量は14.1万tで前年同月比3.7%増を見込み、1~3月の平均でも全ての月で昨対増となる予測で、3カ月平均でも2.5%増と前年を上回る。とくに3月は14万t台と3カ月間内でも増加率が高い。

輸入量は4.5万tと12.8%増を予測している。前年3月は中国の引き合いが強まったことで、ブラジルの現地価格が上昇したことなどから、輸入量が少なかったこともあり、前年実績を大きく上回る予測となっている。3カ月平均でも9.5%増と約1割増加すると見られ、とくに2、3月は10%を超える増加を予測している。

タイでは、新型コロナウイルスの影響から中国向け輸出の見通しが難しく、日本向け輸出を強め始めている。国内では輸入物の価格が底値に近いため、このタイミングで先々の成約を進めようとしている。このタイ産の動きは今後、ブラジル産にも波及すると見られ、輸入量は増加傾向で進むと見られる。

〈需要見通し〉
新型コロナウイルスの影響で、臨時休校や外食控えにより、国産生鮮品を中心に強い引き合いが見られる。しかしこの特需は一時的との見方が強く、2週目以降も続くかは不透明だ。その状況下で、モモは臨時休校がスタートした2日から反転し、その後はもちあいの状況。とくにモモの引き合いが強く、消費者心理からか産地パックへの引き合いも見られる。ムネもそれなりの引き合いが見られる。

今後は新型コロナウイルスの影響がいつまで続くかによるが、各種イベントの中止や、花見の自粛要請などから勘案すると、3月いっぱいはそれなりの引き合いが期待される。他方で学校給食向けが、一部では凍結に回されているとの話もあり、凍結在庫の消化状況も気になるところ。輸入品は外食需要が減退しており、しばらくは苦戦を強いられると見られる。

〈価格見通し〉
3月2日の日経加重平均はモモで588円、ムネが242円と強含んだが、5日には582円、248円となった。モモは引き合いがあるものの、弱含むと見られる。直近の需要だけを考えればもう一段上げたいところだが、期末でもあり、凍結在庫との兼ね合いから現状相場で販売数量を伸ばすことに注力すると見られる。それでも例年この時期はジリ下げ展開となるため、月間平均ではモモが575円前後、ムネは245円前後、農水省市況ではモモが595円前後、ムネが265円前後と見込まれる。

〈畜産日報2020年3月9日付〉