〈令和2年4月の需給展望 牛肉〉需要の落ち込みは予想以上に深刻、和牛高級物中心に弱含み

〈新型コロナへの対応次第では相場の推移に変化も〉
令和2年3月の牛肉需給は新型コロナウイルス感染症による自粛ムードの広がりにより、ホテルや外食関係、輸出需要が大きく落ち込んだ。このため、3月の東京食肉市場の牛枝肉平均相場(税込み)も、和去A5で2,342円(前月比273円安)、A3で1,666円(同241円安)、交雑B3で1,338円(同164円安)、B2で1,139円(同205円安)、乳去B2(搬入)で968円(同45円安)と軒並み値を下げた。

月間を通してみると、下旬に向かって出荷頭数が減少するなか、量販店での焼肉や切り落としの品ぞろえが増えたこと、決算期で在庫消化の目途が付いたことで、相場は反転した。例年、牛肉需要は歓送迎会や花見需要を契機に、大型連休に向かって上向くところ。だが、今年は新型コロナの問題の収束は不透明であり、4月どころかこの先の牛肉需給・相場の動向も見通し難い状況にある。

万が一、政府の自粛要請が解かれるなど状況が変われば、自粛疲れの反動で外食や行楽需要が一気に高まる可能性はある。が、現状ではこれといった需要の上げ材料は乏しく、基本は弱含むとみられる。業界関係者も新型コロナによる牛肉需給への影響は見通しがつかず、外出自粛要請や休校延長の可否など、政府・行政の対応を見守っているところ。相場の推移も、今後の行政の方針次第といえる。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、4月の成牛出荷頭数は前年同月比1.6%増、このうち和牛が4万3,400頭(同4.2%増)、交雑2万1,100頭(1.5%減)、乳用種2万7,500頭(0.2%減)とされ、国産全体の生産量は2万9,800t(1.9%増)と予想されている。チルド牛肉の輸入量は2万4,500t(5.1%減)とやや下回る見込みだ。家畜改良センターの個体識別情報によると、2月末時点の26~28カ月齢の黒毛和種の飼養頭数は10万1,083頭となり前年同期比で4.6%も多い。生産者も春先需要期に向けた出荷を目指して仕上げてきたうえに、需要の先行きが見通し難いため、出荷の繰延べなどはなく、逆に換金売りの動きも予想される。

〈需要見通し〉
新型コロナの影響で、ホテルや外食関係の需要が大きく悪化している。学校給食も3月2日からの臨時休校で長期間止まるなか、大型連休明けまで休校が延長された。週末の外出自粛や冷静な買い物を行うことも求められている。一方、量販店では、切り落としをメーンに品揃えが広がっており、3月半ばからは味付け肉を含めて焼肉を強化する企業も増えている。

相場の値下がりを受けて、交雑から和牛へシフトするケースや、逆に交雑で値ごろ感を訴求する量販店もあるようだ。このため畜種全般としてスソ物の動きはソコソコ期待できるものの、輸入チルド含めてロース、カタロースなどの在庫圧迫が課題となっている。先の需要回復の見通しがつかないなかで、冷蔵庫のキャパや資金繰りの問題から凍結回しも難しい。引続き自粛ムードが広がるなかで、上位等級のロインなどの高級部位をいかに消化するかが課題となっている。

〈価格見通し〉
需要面で悪材料が重なり、明るい材料がないため、相場の下げは避けられない状況だ。今後の政府の新型コロナ対策にもよるが、4月の平均相場は、各畜種、各等級ともに一段下げの可能性が高い。3月ほどではないにせよ、前月比では100円以上の値下りも予想され、和去A5で2,300円前後、A3で1,550円前後、交雑B2で1,050円前後、乳雄B2で950円前後と予想する。相場の値下がりによって、ステーキ・焼き肉など末端での販促強化を切に期待したい。

〈畜産日報2020年4月6日〉