枝肉相場・素牛価格の下落でF1初生牛価格も急落、ヌレ子も前年価格下回る

新型コロナウイルス感染症の拡大で、和牛などの需要低迷が懸念されるなか、枝肉相場の下落は全国の初生牛取引にまで大きな影響を与えている。

農畜産業振興機構が10日までにまとめた3月の全国24家畜市場の初生牛取引によると、交雑種の平均取引価格は前月から1万4,347円下落し、前年同月比27.3%減の21万3,626円と、20万円台は維持したものの、3月の取引価格としては2016年以降、最も安い値を付けた。24市場のうち、18市場が前月から値下がりしており、取引頭数の多い前橋市場では前月から3万5,815円安、熊本市場では同3万8,710円安となった。

例年、初生牛価格は出回り頭数が減少する5月から7月にかけて上昇するが、この時期に下落したのは異例。ここ数年の酪農経営における交雑種の交配率の高さを反映して、3月の取引頭数が同18.7%増の1万4,189頭(前月から1,033頭増加)と多いことも影響している。

だが、上述の通り、需要低迷に伴う枝肉相場の下落で、育成および肥育農家の導入意欲が低下したことが大きい。日本家畜人工授精師協会の乳用牛への黒毛和種の交配状況によると、とくに昨年第3四半期以降、交配率は北海道で20%台半ば、都府県で50%台まで上昇している。新型コロナによる需要低迷と、出回り頭数の増加で今後の初生牛相場は厳しい展開が予想される。

一方、乳用種初生牛(ヌレ子)は前月から1万495円値上がりして12万7,152円と12万円台に乗せたが、それでも前年同月比8.3%安い。こちらも取引頭数は前月から962頭増えて同2.2%増の8,407頭となっているが、もともと構造的な供給不足にあり、3月の取引頭数としては過去5年で最も少ない。このため、価格は2カ月連続で値上がりしているものの、新型コロナの影響など今後の市場環境を踏まえると、交雑種と同様に軟調気味に転じる可能性も考えられる。